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セ・リーグ新人王を獲得した村上宗隆の足跡。高校時代は強打のキャッチャーだった

実は高校時代は“強打のキャッチャー”だった

 高校時代の村上は身長187センチ、体重95キロ。この恵まれた体格を武器に本塁打数は高校通算52発を誇っていた。加えて1年秋からは守備の要である捕手を任されチームを引っ張っていた。二塁送球タイムは最速で1秒86、平均で1.9秒台を計測し、捕手としてはまずまずの肩の持ち主。盗塁を10度(二盗9、三盗1)仕掛けられた2年夏の県予選決勝の秀岳館戦では3つの捕殺をマークしている。  つまり、村上は強打の大型捕手だったのだ。だが、そんな村上が全国的にあまり知られることがなかった理由としては甲子園出場経験が前述した高1の夏、ただ1回だけだった点が大きい。実は同時期の県内には’16年春から4季連続出場を果たすこととなる強豪校・秀岳館が君臨しており、村上のいる九州学院の前にことごとく立ちはだかっていたのだ。特に高2と高3の夏はともに2年連続で決勝戦で対戦し、無念にも連敗。村上にとって2度目の甲子園出場は結局叶わなかったのである。

ドラフトの外れ1位で高校生野手としては異例の3球団競合

 最後の夏は終わったものの“高校生No.1捕手”との評価が揺らがなかった村上。だが、その前に1人の同学年捕手が彗星のごとく現れる。村上が無念にも出場を逃した3年夏の甲子園でこれまでの夏の甲子園1大会の最多本塁打5(保持者はPL学園〈大阪〉の清原和博〈元・埼玉西武など〉)を更新する6本塁打を放った広陵(広島)の中村奨成(広島東洋)だ。  この快挙によって世間は一気に中村に注目。たちまちこの年の“高校生No.1捕手”との認識が定着することに。当然のように中村はドラフトで目玉選手の1人となり、2球団競合のすえ、広島が指名権を獲得。  そして一方の村上は……というと、最初の指名では一度も名前を呼ばれることはなかったものの、なんと“高校生No.1スラッガー”清宮の1位指名を外した東京ヤクルト、読売、東北楽天の3球団が競合。外れ1位指名での3球団競合はドラフト史上でも珍しい現象なのだが、それが高校生野手となればなおさらのこと。その素質の高さが証明された瞬間だった。

――今季は本塁打&打点で見事な数字を残した村上。だが、一方で打率は2割3分1厘に終わり、三振数は184個を数えた。長距離砲の宿命ではあるが、この2部門の数字を向上させることが、来季のさらなる飛躍のカギだろう。<文/上杉純也>
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