更新日:2023年05月07日 13:50
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吉野家が勝ち、鳥貴族は転落。2019外食チェーン戦争の勝者と敗者とは

鳥貴族はあんなに混んでたのに。なぜ…?

 一方、鳥貴族はどうでしょうか。  2018年の前半は全店売上高は前年同月比110%と推移していますが、既存店売上高は前年を下回る状態が続いています。鳥貴族は2018年に1年間で店舗数を547から665へと急拡大しました。しかし、その拡大戦略に呼応するほど新規顧客の開拓ができず、既存店の顧客を奪ってしまうという結果になりました。  事実、2019年7月期の営業利益は前期比マイナス29.2%の大幅減益となっています。  そこで鳥貴族は経営戦略の見直しに入りました。  現在、鳥貴族は新規出店を凍結し、「2021年までに1000店舗」を掲げていた中期経営計画も取り下げています。不採算店舗を閉店し、既存店の回復に力を入れるのです。これは、冒頭に示したいきなりステーキや、以前取り上げたマクドナルドも同様です。  チェーン飲食店は、不調の場合、不採算店舗を閉鎖して赤字を食い止める方向に動くのが通例となっています。その結果、現在は既存店売上高は回復傾向にあります。当然、新規出店はしていないので、全体の売り上げ高は伸びていません。まずは、既存店売上高の足元を固めることが業績回復のポイントになります。

あの現金主義だった吉野家が…

 前述したように、業績が回復した吉野家HDの目指す先は、人手不足の解消と若年層顧客の取り込みです。その中で、売上高を伸ばしたのが「すき家」の親会社であるゼンショーHDです。  ゼンショーHDは、牛丼事業の売上高だけで、4年間で約20%売上高を伸ばしています(2014年1799億円→2018年2143億円)。その間、吉野家HDの牛丼事業の売上高は、4年間でわずか8%しか上がっていません(2014年929億円→2018年1010億円)。

筆者作成

 ゼンショーHDは、お客の多様なニーズに対応し「すき家de健康」をテーマとして、「シーザーレタス牛丼」(500円)、「辛口トマレタ牛丼」(500円)などを導入し、商品力の強化に取り組んでいます。吉野家HDよりも先に若年層の取り込みに成功しました。果たして、吉野家はこれに追随するのでしょうか。  いま吉野家HDは若年層を取り込むため、キャッシュレスに力を入れ始めています。  今年8月に発表されたメルカリのスマートフォン決済「メルペイ」を使ったキャンペーンのほか、オリガミペイの牛丼並盛半額キャンペーンやオリジナル電子マネーの「吉野家プリカ」を発行など、かつての現金主義から脱しようとしています。  また、牛肉以外のメニューを増やし、客単価の上昇につなげる施策を打ち出しています。ベジ定食(498円)や、炙り鯖定食(648円)はその最たる例でしょう。はたして、吉野家はモーッと好調が続くのか(牛だけに)、そして鳥貴族は低迷から飛躍できるのか(鳥だけに)。  今後も注目していきたいと思います。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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