お金

ヤマダ電機が大塚家具を子会社化した理由。ニトリと明暗分けた2つの弱点

弱点2:現金預金がどんどん減る!

 もう一つの危機をもたらした理由が、現金預金の減少です。もともと、無借金経営で財務体質は良好だった大塚家具。連日ニュースを騒がせたあの親子バトルが起きた当時、実は同社は現金預金が110億円ありました(2015年12月期)。しかし、以降は手持ちの現金がどんどん減っていきます。  親子バトルの勃発後は業績の低迷と資金流出が続き、3年後は32億円に(2018年12月期)。そして今年6月末時点では31億960万円、9月末時点では21億9000万円へと減少してます。その背景にあったのが、株式の配当金をいくらにするのかという問題です。  同社は、2015年、2016年は1株あたりの配当金を80円に増配し、2016年12月期は赤字にもかかわらず、株主への配当だけで現金15億円が流出しました。これは、現金が少ない状態ではかなりの痛手です。  その後、固定資産や有価証券を売却してキャッシュ(現金)を捻出してきましたが、ついに売却できる資産も限界に。このままでは来年3月までに手元資金が枯渇する状態になってしまったのです。

なぜヤマダ電機は子会社化を決めたの?

 最後に一つ疑問を解決しておきしょう。なぜ、ヤマダ電機は、今大塚家具の子会社化を進めたのでしょうか?それは、ヤマダ電機が来期大塚家具を黒字化できるという確信があるからです。事実、今回の子会社化発表会見の中で、久美子社長は「黒字化まであと一歩」とコメントしていました。また、ヤマダ電機の山田昇会長も、以下のようなコメントを発表しています。 「改来期の黒字化を目指すことに手応えを感じてきた。そこまでの時間が必要だった」 「(大塚家具は)粗利益率が高いため、売り上げが10%伸びれば黒字化できる」 「ヤマダ電機は結果主義でチャンスを与える」 「3年で投資した44億円分の営業利益が出るのが普通だ」  すべて、希望を持ったコメントです。彼らは黒字化を確信しているのです。そんなヤマダ電機の最近の財務状況を見ておきましょう。実は、この2年はヤマダ電機は家電業界で「独り負け」となっています。 【ヤマダ電機の営業利益】 578億円(2017年) ↓ 387億円(2018年) ↓ 268億円(2019年)  上記のように、営業利益は3年で減少を続けています。  さらに詳しく見てみると、2019年度は売上高が1兆6440億円と増収ながらも、営業利益が28%減(268億円)、純利益が50%減(146億円)と、利益面の大幅なダウンとなっています。  しかし、2020年度の見通しは、売上高が1兆6740億円と増収を発表。営業利益が52.9%増(426億円)、純利益が81.7%増(267億円)と、業績回復が見込める中で大塚家具の子会社化を発表していることがわかります。 「やまーだまだまだ安いんだ、ヤマダの安さはハンパじゃないよ♪」と、安さを売りにした店内ソングが流れるヤマダ電機。一方、大塚家具は高級家具を取り揃えていることで有名。果たして、両者で奇跡的なシナジーは起きるのでしょうか。ヤマダ電機自体も、ここから数年が正念場となりそうです。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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