更新日:2023年05月15日 13:35
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自衛隊員「雑魚寝」問題に光――補正予算でベッド9900個購入へ!

陸上自衛隊

陸上自衛隊Twitterより

災害派遣自衛隊員の環境改善へ

 さて、補正予算の対象に「災害派遣時の用具入れ」とあります。これは自衛隊員個人が持ち込む物を限定するものです。災害派遣時に持ち込めるものは限られており、個人で必要なものを厳選します。  しかし、この箱には個人的な持ち物だけでなく災害時に使う「自腹」の消耗品や絆創膏や傷薬も入っています。自衛官が自衛隊の補給事情や医療体制を信頼していないから私物持ち込み用具入れが必要なのです。災害派遣時に使うゴム手袋や長靴などの消耗品は瓦礫や土砂が混在する災害現場ではあっという間に破れて使えなくなります。通常の使用方法で防衛省予算を想定していては消耗品を補充できません。その結果、隊員の個人負担となり、「自腹」で必要数を買って持ち込みます。 「現地でゴム手袋や長靴がなくてヒドい目に合うのは自分だから」と現役自衛官から聞きました。  災害現場ではさまざまなことが起こります。佐賀県の豪雨災害では冠水した鉄工所の油が流出しました。災害派遣としては初めての油除去任務が自衛隊に課せられました。しかし、その現場で隊員に配られたマスクは粉塵を想定したものでした。 「油流出の現場では粉塵や黄砂を防ぐマスクでは役に立たちません。逆に臭いがこもり危険でした。油除去は10日分で6000円のマスク代が自腹で必要でした」とその現場を経験した自衛官が教えてくれました。災害派遣では財布の中身もげっそり痩せるようです。災害も有事も、その現場に必要で適切な資材が即座に調達可能な余剰予算があるべきです。しかし、裁量で使える予算枠がありません。計画されたモノ以外なければ、必要なものは隊員が自腹負担するしかありません。これでは災害対処が遅れ、助けられる命も助からなくなりませんか? 自衛隊の部隊がある程度予算をプールしておき、その現場にあったものを即座に判断して調達できるようにすべきです。  これは災害派遣の消耗品だけでなく、広くは有事の武器、弾薬、燃料の調達にも言えます。想像しうる最悪の状況に即座に備える予算がなくて不安です。  安全保障の予算をケチれば、それは国民の命を軽視することになります。季節外れの桜を見る会問題に浮かれていると、冬の大雪対策に間に合いませんよー。  不況風の吹く年明けにげっそりしてしまいますが、自衛隊に対しての財政支出は国民の最大の福祉です。この支出と賃金増額で自衛隊の人員不足問題だけは少しよくなる予感がいたします。令和2年が自衛隊にとっていい年になりますように。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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