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川口が「本当に住みやすい街1位」って本当? 不動産業界の裏事情…

情報元から浮かぶ“邪推な考え”とは

 元をただすと、このランキングの発信元であるアルヒ株式会社は住宅専門のローン会社だ。住宅の購入を検討された方であれば、まず知らない人はいないくらいの認知度に成り上がっており、特にフラット35の取り扱い量の多さが業界トップの会社である。  ローン会社の差別化は金利が勝負であるはずが、このゼロ金利の時代に於いては金利のみでの差別化は難しいのが現状。ではなぜここまで首位にあるのか?  それは、そもそも対象が「一般所得層」に絞ってあるという点であろう。取り扱いが多いということは、“客一人当たりの借入金額が高い”か、“単価は低くとも件数が多い”かであり、アルヒに関しては紛れもなく後者なのだ。  このことが良い悪いということではない。ローン会社として打たれた施策が時流にはまり、業績がうなぎ登りになっているだけのことで、経営が成功していると言えよう。ただ、フラット35という商品自体はあちこちで扱われているものであり、アルヒだけが持つ付加価値もあるということだ。そのひとつが“審査の緩さ”である。
ローン審査イメージ

写真はイメージです

 借り入れ申し込みには、最初に「事前審査」を申し込まなければならない。「事前」とあるが、事実上は本審査と言えるもので、借入金額と最近の所得、勤務先や車のローン、その他クレジットで購入した物、加えてカードの保有数や利用履歴・自己履歴などが関与してくる。借入額から計算される年間の総返済額が、所得のX%以内に収まっていれば融資可能、超えていれば融資不可となるわけだ(厳密には異なるが簡素化して書けばほぼこの通り)。  Xの基準は大手のほとんどが30%だが、ここがアルヒは35%、つまり“緩い”のだ。所得がある水準以下だったり、他に借り入れがあったりして、大手金融機関で断られた層を受け入れる懐の深い体制がここにはある。翻って、そんな彼らが、今回の住みやすい街大賞を打ち出すことで、自分たちのメインターゲットになりそうな層に対して、「何かを届けたかった」とは考えるのは邪推だろうか。  手の届きそうな手頃な価格の物件が多数存在する地域、そこが「本当に住みやすい街」として上位に来ていたらどうだろうか。検討する際に候補にすら入れなかった人たちでさえも、現実的な選択肢の一つとして残してくるのではないか。それを手助けする借入審査なら整っているのだから。  どれだけの公平性を持ったアンケートだったかは不明だが、彼らが打ち出したアンケート結果では「川口」がトップに君臨したというのは、今後も事実として残るのだ。<文/古川博之進>
タワマンに住む会社員。不動産業、マンション理事長の経験を元に主に不動産業界のテーマを執筆。年100回開催経験から合コンネタも扱うが、保護猫活動家の一面も持ち合わせている。
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