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部屋の中には老婆一人と大量のコッペパンと牛乳…この家で起きていたことは?

「ちょっと調べてほしいことがあるんです……」
不動産イメージ

写真はイメージ(以下同じ)

 不動産業界に身を置く私は、不動産の個別相談会で様々な人間に出会う。冒頭のセリフとともに私の前に現れたのは、60代で飲食店を営むご夫婦だった。  “不動産相談会”とうたっているのに全く別の調査を相談されたので、とりわけ記憶している。

怪しい調査依頼に応じると…

 依頼内容は指定された場所にある建物の、外からの観察依頼であった。注意事項は「くれぐれも住人にはばれないように」である。  手元の地図で見れば、都心の〇〇駅から歩いて数分、土地にしておよそ100坪と言ったところか。場合によっては仕事にも繋がるかなと思い、ひとまず観察だけは引き受けてみることにした。事前調査として法務局などを当たり、その他 簡易な調査だけで、現地に住む人物は容易に判明した。驚くことでもない、ご主人のお母様と弟夫婦の3名であった。 二世帯イメージ 張り込まなくても、通りすがりに何度か眺めるだけで、状況も十分に把握できた。1階は玄関が2つの二世帯住宅になっており、片方にはお母様が、もう片方には弟夫婦が。2~4階は賃貸で、立地と平米数から試算すれば、ローンを差し引いても手残りは十分、将来的にも安泰。賃貸併用物件としては成功の部類に入るだろう。  家の前で見かけた老婆の車椅子を息子らしき人(依頼人の弟)が押し、その脇を嫁らしき人が歩く様は、何の変哲もない光景であり、私は、依頼者に見たままを報告した。そもそも何を知りたかったのだろうか。報告に対して深く追及されることもなく、釈然としないまま“調査任務”を終えた。  それから半年ほど後、たまたま付近を通る機会があったので、気になった私は、飛び込みのセールスマンの体で母親の方のインターホンを押してみた。警戒はされたものの、大雑把な自己紹介とあわせて、息子さん(兄の方)の話を出したせいか、話を聞いてもらう事ができ、家にも上げてもらう運びとなったのだが……。

生活用品が乱雑する室内には、大量のコッペパンと牛乳が

 室内は薄暗く、生活用品が乱雑に置かれていた。高齢で脚が弱っていては、片付けも難しいのだろうが、すぐ横に息子(弟)夫婦が住んでいるとは思えないくらいの散らかりようである。これでは車椅子もさぞ動かし辛いだろう。何かあったときには大丈夫だろうかなどといらぬ心配をしてしまう。  聞けば息子(弟)夫婦は海外へと出掛けているらしい。最低でも1週間、長ければ1か月にも及ぶ旅行を頻繁に繰り返しているらしく、仕事は何をしているのかと聞いてみたが、それはお母様も把握できかねていた。  そんな放蕩息子を責めるどころか、むしろ感謝していると彼女は言う。 「(脚の悪い)自分の面倒を見るために時間を割いてくれているから、仕事がうまく定まらないのよ、きっと」と。 「とにかく“すごく感謝している”の」と、聞いてもいないのに感謝を繰り返す彼女の前のダイニングテーブルには、20個位のコッペパンが、ひとつの大きなビニール袋に入れられて無造作に置かれていた。これが食事なのだろうか。 「脚が悪くてお茶も出せないから、ご自分で冷蔵庫から取ってくださいな」 老婆イメージ そう言われて、開けた冷蔵庫には、未開封の1リットルの牛乳パックがぎっしりと詰め込まれていた。量もさることながら、彼女の力では紙パックを開けることは不可能としか思えない。  大量のコッペパンと大量の牛乳。失礼ながら、ペットとして飼われている犬や猫を想像した。長期旅行に行く間に、ご飯と水を置いていく、あのイメージだ。  何なのだ、この状況は
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この家に何が起きていたのか?
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