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「喋ってるぐらいの感覚で滑る」スケートボード四十住さくら17歳の素顔

<第6回>四十住さくら(スケートボード・パーク女子代表候補)

 スケートボードというと、子どものころ、近所のお兄さんと遊んだ記憶がある人が多いかもしれない。そんなきっかけから、スケートボードの虜になったのが四十住さくら。13歳年上の兄が、友人とスケートボードで遊び始めたのを見て、「お兄ちゃん子」だった四十住は、「私もやる!」とはじめた。  それが11歳の時のこと。それから6年のうちに、スケートボードが東京オリンピックの正式種目となり、四十住がメダル候補として注目されるようになるとは、誰が想像できただろうか。お兄ちゃんたちのように「うまくなりたい」と練習をしていた四十住は、気づけばとびきり上達していた。  カリフォルニアで生まれたスケートボードは、欧米などの都市部で発達した比較的新しいスポーツだ。日本の和歌山で暮らす四十住の家の近所に、それを楽しむための施設であるボードパークはない。四十住の両親は当初、進境著しい娘の才能を認めながら、どこまで頑張るのかを尋ねたという。 「家族会議になりました。(ボード)パークも近くにないし、お金もかかるから、本気で日本一とかを目指す気でやるんなら応援するけど、遊びでやるんやったら応援できないって言われたから、私は日本一を目指して頑張りたいって答えたんです」  頑張ることが何でもないように、四十住は柔らかな和歌山弁で言う。 「でも(両親は)『本気で頑張るとはこういうことだ』って、私に思い知らせて諦めさせたかったみたい。それで、スパルタな練習メニューを紙に書いて渡されたので、それを毎日こなしてました」  そうしたら、もっと上達しちゃったとばかりに、四十住はいたずらっぽい笑顔で続ける。 「いろいろ課題が出たけど、私がそれを全部クリアしちゃうので、家族にも私の本気度が伝わったみたい」  娘の才能と本気度を確かめた両親と兄は、それからは全面的にバックアップすることを決断。自宅の庭に特設のコースを建設し、四十住のさらなるレベルアップを支えた。

スケートボード一筋で練習の虫。「息抜きもスケートボード」

Garth Milan/Red Bull Content Pool

 オリンピックで行われるスケートボード種目は2つ。平地に障害物を置いたコースで滑るのが「ストリート」で、さまざまな皿や椀状の形が組み合わさったコースで滑るのが「パーク」。四十住は、後者「パーク」の選手で、こちらはスノーボードのハーフパイプのように、窪地の底を駆け上がり、空中で華やかなエアトリックをきめるのが見どころだ。採点基準は、いずれも難易度や完成度、スピードやオリジナリティに全体の流れなどが数値化される。  四十住が習得しているのは、基礎的な技も含めると100種類は超えるという。高難度の技はこれらの組み合わせからなる。競技として高得点を叩き出すには、確かな基礎からなる高難度の技を美しくきめることが不可欠。技の探求と完成は一筋縄ではなく、例えば、まだ世界で数人しか出来ないという「バックサイドノーズブラント180アウト」という大技は、習得に2年近くかかったという。  彼女の強さの源は、その練習量とスケートボードへの情熱だ。今、高校生になった四十住は、自宅の特設コースを“卒業”し、日々、神戸にあるボードパークでその技を磨く。スケートボードの練習時間をつくるため、過密スケジュールとなる。 「朝6時に起きて、7時の電車に乗って、8時すぎに学校に到着。午後3時すぎに授業が終わって、お母さんが車で迎えにきてくれて、そこから2時間くらいで神戸のパークに着く。そこで夕方5時すぎから夜10時半ぐらいまで練習します」

Keisuke Kato/Red Bull Content Pool

 毎日、片道2時間かけて神戸に通い、5時間みっちりと練習をするのだ。週末となれば、もっと長い時間をパークでの練習に費やすという。息抜きはと尋ねると、「YouTubeでスケートボードの動画を見ることですね」。すべての空き時間をスケートボードに捧げ、それ以外に熱中するものがないと断言する。  それでいて、しゃにむに躍起になっている雰囲気は微塵もない。スケートボード一色で“頑張っている”にもかかわらず、軽やかで自然体なのだ。ただ、スケートボードが面白くて仕方がないというのが伝わってくる。 だから、趣味も特技もスケートボード。なんとか強いて何か他に好きなことはと尋ねると、「折り紙で何か作るのは好き」とはにかんだ。大会の遠征で外国人選手との会話も弾むのだという。 今やその実力から注目度はうなぎ上りで、昨年末は紅白歌合戦に出場するなど、テレビ出演も少なくない。だが、テレビを見る時間もほとんどないため、有名な芸能人もあまり知らない。紅白で共演したKis-My-Ft2も会うまで知らなかった。
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「大会では緊張しません」
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