スポーツ

金を掴む。オリンピック新種目・スポーツクライミング野中生萌の「開き直り力」

<第4回>野中生萌(スポーツクライミング)

©️Suguru Saito / Red Bull Content Pool

 カラフルなホールドが散りばめられた壁を身体ひとつで登っていく。スポーツクライミングは、この夏の東京オリンピックから採用された新競技だ。1人の選手が、速さを競う「スピード」、高さを競う「リード」、完登数を競う「ボルダリング」の3種目を行い、それぞれの種目の順位を掛け算して総合順位が決まる。日本は近年、「ボルダリング大国」と呼ばれ、選手層も厚く、メダル獲得の期待は高い。  クライマーの野中生萌にとって、「金メダル」は掴みどころのない夢ではなくリアルな目標だ。2018年シーズンは、IFSCクライミングワールドカップのボルダリング種目で悲願の年間女王に輝いた。  2019年シーズンは、10月にドーハで開催されたANOCワールドビーチゲームズ(オリンピック委員会連合が主催したスポーツの国際総合競技大会)のボルダリング部門で優勝、11月にオリンピックと同じ3種目を複合したチャイナオープンで優勝し、見事に両大会ともに金メダルを獲得。東京五輪の舞台をイメージさせる屋外の酷暑でしっかりと結果を出してみせた。 「暑い環境下の大会を経験できたのは良かった」とその2大会で優勝したことに、大した感慨をみせることなく野中は言う。とはいえ、相当に暑かったのではと尋ねると、「いやもう、めちゃめちゃ暑かったです!」と自嘲気味に笑った。トップ選手らしい落ち着きの中に、弾けるような若さがのぞく。  聞けば、両大会ともに壁が屋外に設置してあったため、ホールドも触ると思わず「熱っ!」と離したくなるほどで、足元の緩衝マットも自分が履いているシューズもゴム製のため熱を吸収してしまい、触れるところすべてがアツアツだったのだそうだ。  東京オリンピックでスポーツクライミングの会場となるのは、青梅アーバンスポーツパーク。仮設で整備された屋外の会場だ。開催日程は8月4日から7日で、一応は「暑さを考慮して夕方から夜間に開催される」と発表されている。しかしながら、同じ理由で夜間に開催した前述のドーハでの大会も、夜間になおも30℃超えで高湿度なうえ、日中のうちに熱を溜めた壁は夜も熱いままだったというのだから、東京での状況にも不安が募る。  だが、野中はかすかな自信すら漂わせて言う。「(2大会で)経験したので、暑さの対処はできると思います。そもそも、いいコンディションではできないだろうと開き直ってますし、そういうところのメンタルも大事だと思うので」
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強さの源は「開き直り力」
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