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一生、食いっぱぐれない人とは…落ち目の日本で生きのびる道/アマゾン元幹部に聞く

50代で転職を決めたわけ

――つい最近、星さんは新たなるチャレンジをされたそうですね。 星:そうなんです。2月から「オイシックス・ラ・大地」という有機自然食品を中心としたEコマースのCOO就任予定でお世話になることにしました。  日本の食料自給率が低い中、またオーガニック食品の供給量がまだ少ない中、消費者にその安全、安心な野菜を届けるだけではなく、生産者にも報いるビジネスモデルを構築しており、そのミッション、社会的意義に共感し、入社を決めました。  以下が、「オイシックス・ラ・大地」のミッションステートメント(企業理念)ですが、素敵だと思いませんか? <これからの食卓、これからの畑。 より多くの人が、よい食生活を楽しめるサービスを提供します よい食を作る人が、報われ、誇りを持てる仕組みを構築します 食べる人と作る人とを繋ぐ方法をつねに進化させ、持続可能な社会を実現します 食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決します 私たちは、食のこれからをつくり、ひろげていきます> ――今までの経験を「オイシックス・ラ・大地」で、どのように活かすつもりですか? 星:やはり、さらにスケールさせるための仕組みづくりだと思います。安心安全な食品の需要がますます高まっているなか、顧客数も売り上げも急速に拡大しています。消費者、生産者の両方にさらに貢献できるように、供給量を拡大し、利便性を高める、そしてそれを支えるメカニズムをアップグレードできればと考えています。 ――今までのインタビューで話してもらったアマゾンでの経営手法やリーダーシップスタイルは、日本企業でも受け入れられるでしょうか? 星:それが、入社してみたら「オイシックス・ラ・大地」の行動規範が、アマゾンのものと似ているところがあるのです。ちょっと比較してみますね。 1.(Oisix) ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ  (Amazon) これは、アマゾンのDeliver Resultsと同じです。和訳は公式ではなく、私の個人的な訳ですが「アマゾニアンは結果を出せ」となります。 2.(Oisix) 早い者勝ち、速いもの価値  (Amazon) Bias for Action――ビジネスにはスピードが重要 3.(Oisix) お客様を裏切れ  (Amazon) Customer Obsession――顧客中心の判断基準は妥協するな  (Amazon) Think Big――大きな視野で物事を考えろ 4.(Oisix) サッカーチームのように 5.(Oisix) 当事者意識、当事者行動  (Amazon) Ownership――「それは私の仕事ではありません」は禁句 6.(Oisix) 強さの根源は成長力  (Amazon) Learn and Be Curious――常に学び、好奇心をもつこと 7.(Oisix) 前例はない。だからやる  (Amazon) Invent and Simplify――常に創造性とシンプルさを求める  (Amazon) Are Right, A Lot――多くのことに正しい判断を下す  このように常に顧客中心主義であり、当事者意識をもって、顧客の利便性をイノベーションで向上していく方向性はアマゾンで私が培ってきた考え方を特に変える必要もなく、ますますそれを訴求できるように行動していけばいいだけです。例えば、Oisixでは、安心安全はそのままに、共働きご夫婦などの顧客の利便性をさらに追求し、料理の時短を可能にしたミールキットなるものを開発しているのが、まさに行動規範から生まれたものです。 =====  まさに、50代でもサバイブしていることを証明したようなCOO就任。20-30代はもちろん、「なんとか逃げ切ろう」と思っている40-50代も、まだ諦めるのは早いかもしれない。 amazonの絶対思考【前回インタビュー】⇒日本企業はなぜ没落したのか。“チマチマ病”という悪弊/アマゾン元幹部に聞く 【星健一氏プロフィール】
星健一氏

星健一氏

1967年生まれ。JUKIおよびミスミで海外現地法人の社長などを務める。2008年アマゾンジャパンに入社、リーダーシップチームメンバーとなり、創世期~成長期の経営層として活躍。2018年アマゾン退社後は、kenhoshi & Companyを設立し、セミナー講師、コンサルティングを手掛ける。2020年2月、「オイシックス・ラ・大地」に入社、COOに就任。著書『amazonの絶対思考』 <取材・文/鈴木靖子>
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