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初めて体験する新型コロナをめぐる状況。今はたくさん映画を見ています/鴻上尚史

今はたくさん映画を見ています

 新型コロナウイルスをめぐる状況は、日々、変わっています。この原稿は、基本的に、活字になる一週間前に書いています。ネットに載るのはさらに一週間後です。  こんなに、原稿が状況に追いつかないという体験は初めてです。今、この時点で僕が言いたいことと、二週間後に僕が言いたいことが違っている可能性が高いです。 鴻上尚史 問題は、3月15日。とりあえず自粛を続けるかどうか、様子を見る目安と言われている日に、誰が何を言うのか。  見に行く予定だった芝居が、続々と休止になったので、たくさん、映画を見ました。  テレビの内幕を描いたドキュメンタリー『さよならテレビ』。  社会科見学で東海テレビを訪れた小学生に、報道部長が「報道の使命」をレクチャーします。 「①事件・事故・政治・災害を知らせる ②困っている人(弱者)を助ける ③権力を監視する」  報道部長は、一点の迷いもない顔で小学生に語るのです。  しかし、毎日、報道部長が徹底的に社員に語るのは、「低迷する視聴率」です。中京エリアで、第4位。つまりは最下位の番組をどうしたらいいのか、それが話題です。  そして、働き方改革で残業を100時間以内にすることという「業務命令」を伝えます。けれど、同時に、視聴率を上げることも至上命令です。  反発し、苦悩する社員達が映されます。そして、報道部長が最後に「やれって言われた以上、サラリーマンなもんですから、従わなければいけないのもしょうがない」とまで語る部分も映画は映します。  番組の司会者、福島智之アナウンサーにも、映画は迫ります。自分の言葉で自分の意見を伝えないのかと。福島アナウンサーは、カメラの前で正直に、そうはしたくないと語ります。 「表現することはリスクを取ることではないのか」と監督の圡方宏史氏はさらに迫ります。口ごもる福島アナウンサー。  この作品を、開局60周年記念番組として放送した東海テレビの懐の深さというか、大きさに感動します。オンエア時は、77分でしたが、映画版として109分の作品になりました。ネタバレしますから、詳しく書けませんが、最後、「あっ!」と思う仕掛けがあります。その部分を含めて、凄い「ドキュメンタリー」です。テレビが自分自身を問いつめた見事な作品になっています。
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仲間への愛は、外部への憎しみに
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