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<純烈物語>なぜワイドショーは純烈に対し好意的なのか?<第37回>

「見出しを作ってくれるからというある種の信用がある」

 物事はよく受け取るか悪く受け取るかのどちらか。スキャンダルによる悪名を流布し、落とそうと思えばいくらでもできるのがマスメディアの怖さである。  ところがその後の純烈を追う上での空気感が、実にポジティブだった。他人の揚げ足をとったり、ネガティブなとらえ方をしたりすることで数字をむさぼろうとするのがワイドショーというイメージがある中、それは別世界のように思えた。新宮は言う。 「そこは、いい意味でも悪い意味でも業界として権力のないメーカーと事務所だからこそ、小細工ができないので丸腰で闘ったのが逆によかったのではと思います。純烈は、こういう質問はしないでというのがなく、どんな質問でもOKな姿勢でいる。それは、酒井一圭というプレイングマネジャーがいるからできることであって、ほかの誰かがプロデュースしていたらストップがかかってできない。  ワイドショーにも応援していただけたのは、投げかけたことに対し全部返してくれるから。なぜ純烈に毎回ワイドショーが集まるかというと、聞いたことに答えてくれる、見出しを作ってくれるからというある種の信用がある。  そういった関係を作り上げたのが、スキャンダル後の2019年でした。大した面白いネタじゃなくても、囲みで何か聞いた時にネタも入れて返すじゃないですか。報じる側も獲れ高が大きいので喜ぶという関係ですよね」  1月24日に開催された『白と黒とハッピー~純烈物語』発刊記念イベントでも、おびただしい数の報道陣が集まった。ただ、その場で求められたのは前日に欅坂46を脱退した平手友梨奈に関するコメントだった。  そこで「イベントとは関係ないことだから……」とならないのが純烈であり、酒井。当初の予定では、開場前の集合写真及び動画撮影のみだったのが報道陣から「平手さんの件について質問をしてもよろしいですか?」と新宮に打診があり、その場でOKを出した。  そこはリーダーだったら受け入れて、ちゃんと答えるだろうという阿吽(あうん)の呼吸。さらには、ここで話したことはニュースとなりまたたく間にウェブ、紙面を通じ拡散されるという計算もあった。  じっさい、イベント終了数時間後にはネット上に酒井の平手に対する発言があふれ返り『白と黒とハッピー~純烈物語』を手にしニッコリと笑うメンバーの画像が添えられていた。トークの内容だけだったら、記事にはならなかったに違いない。 「そういう応援態勢も、あのスキャンダル以後もメンバーが一つひとつ逃げずに対応したからです。基本姿勢として、仕事を回してくれた人や番組に対し、全力でお返しするスタンスはすべてに通じている。  昨年6月のNHKホール(マッスルとのコラボ)も、あれほど時間がない中でちゃんと練習し、準備をして臨んだからこそあれほどのクオリティになり、マッスルを見たことがない純烈のファンにも楽しんでもらえるものになった。あれも、その場を与えてくれた人たちへのお返しですよね」  その言葉を新宮から聞いた時、スキャンダルに対する謝罪会見に臨んだ酒井が「世の中のニヤニヤして見ている人たちに対し、その腹ペコの部分も満たしてやるつもりだった」ことを思い出した。いつ、いかなる状況でも受け手の存在を意識する姿勢。  応援してくれるファンやかかわる者たちはともかく、かかわらない者の存在やともすれば敵方に回る可能性もある対象であってもウィン・ウィンの関係を築くにはどうするべきかを思考し、実践する。そんな酒井だから、新宮の目には「使われ上手であり、使い上手な人」と映るのだ。
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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