更新日:2023年05月24日 15:52
エンタメ

<純烈物語>仕事が消えていく中、府中駅前で酒井にエネルギーをくれたおばちゃん<第40回>

府中で酒井を呼び止めた、ひとりのおばちゃん

 差し出されたスマホを見ると、それはスズメ蜂の巣の画像だった。 「全然気づかなかったんだけどさ、去年の夏からあったんだって。それで、そこの保健所へ相談にいったら、コレ(蜂の巣駆除会社の名刺)をくれてね。もうね、こんなデッカいのがあったらたまんないよねえ」と、一気にまくしたてるおばちゃん。  そんなのどうでもいいだろうよ……と思いつつも、やさしいリーダーは「そうだね、たまんないよね」と一応返す。結局、おばちゃんは何が言いたかったのかというと、スズメ蜂の件ではなかった。 「リーダー、4月の川越のチケットを持ってんだけど、やってほしいんだよね。チケットを取るのも大変だったし」 「うーん、そんなことを言ってもさ、まだ終息も見えていないし、ましてやおばちゃんのような年齢のファンが多いし、純烈の会場からコロナを発生させたくないんだよ。たぶん、いろんな人が再開しても最後に再開するのが純烈なんじゃないかって、俺は思ってんだ」 「そうだよねえ……うん、こんなことを言っても仕方がないのはわかるんだけど、でも一つだけ聞いて。純烈がないと、チョーつまんない!」  ここで信号が青になり、酒井は「ごめんな、バイバイ」と言って歩き始めた。最後におばちゃんが言ったのは「裕二郎さんによろしくねーっ!」だった(そこかよ!)。  駅の改札を通りながら、同じように全国で悶々としている純子と烈男の皆さんがいて、今のように横からガーン!と受け止めたら交通事故級のエネルギーになるんだろうなと思った。純烈はそれを受け止め、跳ね返すぐらいの力でやっていかなければならない。  気づかぬうちにそんな日々を過ごしていれば、いざそれがなくなったら体に変調をきたすのも無理はない。案のじょう、2週間ぶりの仕事で歌番組に出演し『今夜はドラマチック』1曲を歌い、踊っただけでゼーゼーとなってしまい、小田井涼平と顔を見合わせ「こんなに疲れるのかよ!」と苦笑し合ったのだった。
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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