匿名のSNSであっても自分の社会性を強化することはできる/鴻上尚史
匿名で発信するSNSで“社会”を強化するという試みの先に
総務省の『情報通信白書』に公開されているツイッター利用に関する調査で、日本のツイッターの匿名率が75.1%なのに比べて、アメリカが35.7%、イギリス31% フランス45%、韓国31.5% シンガポール39.5%というのは衝撃の数字でした。
SNSでの誹謗・中傷の哀しい事件を受けて、『グローバル・ジャーナリズム』(岩波新書)を書かれた澤康臣氏がツイッターで紹介していました。
澤氏は、「日本は匿名で言説することへの抵抗感や懐疑が希薄な国だと思う(内部告発者など例外は無論あるが)TWも公の場、誰もが責任も誇りももって話す空間になればと願う」という文章をこの数字に添えていました。
以前、この連載で紹介した、「SNS で知り合う人はほとんど信頼できる」という設問(『情報通信白書』)に対して、「そう思う・ややそう思う」が日本は12.9%、アメリカが64.4%、ドイツは46.9%、イギリスは68.3%という総務省の調査と、根本の所では同じ状況を現していると思います。
ツイッターなどのSNSでの誹謗・中傷をどうしたらいいかは、今、法律家を中心に活発な議論が起こっています。
「匿名であること」は「表現の自由」と深い関係もあるわけで、いきなり法律を改正して厳罰化する、という流れは危険だという論調に僕も賛成します。
SNS事業者の団体が、緊急声明を出したとニュースにありました。SNSの健全利用に関する取り組みを行うという発表でした。
課題も多いでしょうが、少しでもうまく機能してくれるといいと思います。
同時に、「発信者情報開示請求」の簡略化が重要だろうと思います。
はっきりしていることは、人類はいまだ経験していないことを、手探りで進めている、ということです。誰にも分かりやすい正解があるわけではなく、試行錯誤を続けながらベストではなく、ベターな解決案を探るしかないてでしょう。
いえ、ひょっとしたら、ワーストではなくワースな解決案かもしれません。でも、最悪を選ぶよりは、それよりは悪さがましなものを選ぶという対策もあると思います。
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