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『相談役 島耕作』『結婚アフロ田中』漫画はコロナ禍の時代をどう描くか

リモート飲み会を大胆な手法で描いた『結婚アフロ田中』

25号『結婚アフロ田中』

『スピリッツ』25号『結婚アフロ田中』より[(C)のりつけ雅春/小学館]

 リモート飲み会といえば、『ビッグコミックスピリッツ』24・25号(5月11日発売)の『結婚アフロ田中』(のりつけ雅春)でもネタにしていた。主人公・田中が友人たちとリモート飲み会をする。その4分割画面だけで1話分を構成するという思いきった手法で「今」を描いた。実は同作では19号(4月6日発売)でフィリピンパブの女の子が「コロナウイルスだヨ――― どーせお客さんこないヨー」とのセリフを発している。作中でコロナに言及したという点では『相談役 島耕作』より早かった。22・23号(4月27日発売)ではキャラ全員がマスクを着けており、リモート飲み会の次の27号(6月1日発売)ではオンラインキャバクラが登場。「ソーシャルディスタンス」「飛沫感染」といったワードに加え、「早くコロナおさまらないかな―――!!」というセリフも登場した。
27号『結婚アフロ田中』

『週刊スピリッツ』27号『結婚アフロ田中』より[(C)のりつけ雅春/小学館]

 同様に『オフィスユー』6月号(4月23日発売)の『カフェでカフィを』(ヨコイエミ)でもLINE(とおぼしきサービス)のビデオ通話によるリモートお茶会を描いている。3人の中年女性の会話画面を、ページを3行×3列のコマに9分割して表現。タテの列が各人の画面、ヨコの並びは同一時点での3人の様子となる。コロナについては触れられていないが、このアイデアが出てきたのもコロナの時代なればこそだろう。

ドキュメントのような展開が胸を打つ『新しい足で駆け抜けろ。』

 そして、最もストレートにコロナの影響を作中に取り込んだのが、『ビッグコミックスピリッツ』連載の『新しい足で駆け抜けろ。』(みどりわたる)である。  事故で左脚を切断した元サッカー部の高校生が、義足で陸上競技に挑む青春スポーツ物語。前出『結婚アフロ田中』で全員がマスクを着けていた22・23号にて、主人公がマスク姿で登校、部活中に6月までのすべての大会の中止を知らされる。  24・25号(5月11日発売)では父親が「コロナの影響で在宅勤務」となり、学校に行けば部活が停止に。さらに、27号では尊敬する先輩がめざしていたインターハイも中止となる。息子が義足で走ることに理解があるとは言いがたい父親の「これから世の中 スポーツどころじゃなくなるからな」というセリフが、いろんな意味でえげつない。
27号『新しい足で駆け抜けろ。』1

『週刊ビッグコミックスピリッツ』27号『新しい足で駆け抜けろ。』より[(C)みどりわたる/週刊ビッグコミックスピリッツ連載中]

27号『新しい足で駆け抜けろ。』2

『週刊ビッグコミックスピリッツ』27号『新しい足で駆け抜けろ。』より[(C)みどりわたる/週刊ビッグコミックスピリッツ連載中]

 スポーツものなのに部活も大会も中止で、学校もおそらく休校になるはずだ。ステイホームで練習もできないとなると、いったい何を描くのか。フィクションながら同時進行ドキュメントのような展開が胸を打つ。今後どうなっていくのか、コロナの状況と同様、予想もつかないが、ある意味歴史に残る作品になるだろう。当初想定していたストーリーとはまったく違う方向に舵を切った作者と編集部の決断に敬意を表しつつ見守りたい。 (取材・文/南 信長)
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