酒好きアラサー女子3人が飲みまくる『のみじょし』にハマってしまう理由――南信長のマンガ酒場(3杯目)
マンガの中で登場人物たちがうまそうに酒を飲むシーンを見て、「一緒に飲みたい!」と思ったことのある人は少なくないだろう。『まんが道』のチューダーのように一度は飲んでみたい酒、『あぶさん』の「大虎」のように一度は行ってみたい酒場もある。酒の嗜好がキャラの特徴となっているケースも多々あるし、酒を酌み交わすことで親子や仲間の絆を深めたり、酔っぱらって大失敗、酔った勢いで告白(あるいはベッドイン)など、ドラマの小道具としても酒が果たす役割は大きい。
当コラムでは、そんなマンガの中の印象的な“酒のシーン”をピックアップし、そのシーンと作品の魅力について語る。酒好きな方はもちろん、そうでない方も、酒とマンガのおいしい関係に酔いしれていただきたい。『めぞん一刻』『ママゴト』に続いては、タイトルそのまんまの呑ん兵衛マンガだ。
俗にいう「肉食女子」とは、別にステーキや焼き肉ばっかり食ってる女のことではない。しかし、この作品のタイトル『のみじょし』は、そのまんまの意味。酒好きのアラサー女子3人が、何かにつけて飲みまくる4コマ連作集である。
一応の主人公は「みっちゃん」こと高瀬道子(29)。お調子者でいろいろ残念な一人暮らしのOLだ。仕事帰りや風呂上がりのビールのために生きているといっても過言ではないビール好きだが、一番好きな組み合わせは「日本酒とカニ」。ワインやウイスキー、焼酎にも目がなく、実家の母親が作る梅酒も大好き。要は飲めればなんでもいい。
親友の東雲ゆき(29)は主婦で二児の母。いつも笑顔でほんわかムードの癒し系だが、実は無敵に酒が強く、いざというときにはボスキャラ的威圧感を発揮する。
そしてもう一人は、書店員で筋トレが趣味のクールビューティ「ソノさん」こと宮内美園(29)。ふだんはストイックな食生活だが、道子やゆきと飲むときは別。テンション上がりがちな道子に対するツッコミ役でもある。
そんな3人が春夏秋冬、いろんなシチュエーションで酒を飲む。基本はそれだけのマンガなのだが、読めば読むほどハマってしまう。何がいいって、まず酒飲みの生態や心情を的確すぎるほど的確に描写している点が素晴らしい。
たとえば、ソノさんの強引な勧誘によりジムで汗を流したあと、焼き肉レストランでとりあえずビール。乾杯から「んっごっんっごっ」と一気に飲み干しテーブルに突っ伏す。そのまま呼び出しボタンで店員を呼び無言でおかわり!【図1】
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このシーン、酒飲みなら「わかるわかるわかるわかる」と100回くらいうなずくはず。ほかにも、地ビールが3種類あったら迷わず全部注文する。カニと日本酒のコンボがあまりにうまくて感涙にむせぶ。花見の席で「真っ昼間に外で飲むビール…っ 最っ高ー!」と叫んで「せめて『桜を見ながらの…』とかにしようよ」とツッコまれる。出張帰りの新幹線まで時間があれば駅前の立ち飲み屋とかに寄らずにいられない。ビール祭りに行けば「いっそもうここに住みたい……」と思う。健康診断前にドロナワで1週間の禁酒を誓うも、めっちゃつらくて泣きそうになる。海水浴に行っても海の家で焼きハマグリかなんかをアテに飲んでるだけ……など、とにかく「酒飲みあるある」が満載なのだ。
昨今大ブームで百花繚乱の食マンガのなかにあっても、これほど呑ん兵衛が心から共感できるものは珍しい。読めば当然飲みたくなるわけで、1~3巻の帯の背の部分に書かれた〈モーレツ飲みたくなる4コマ。〉〈激しく飲みたくなる4コマ。〉〈飲みたい衝動MAX4コマ。〉とのキャッチコピーにウソはない。
【3杯目】迂闊『のみじょし』◎「この酒飲み女子がすごい!」第1位!
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『のみじょし 1』 酒好きアラサー女子の呑ん兵衛コメディ4コマ! |
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