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国の借金1千100兆円でも日本は破綻しない…現代貨幣理論=MMTとは?

ネット上で見るMMT議論は不毛?

MMTが日本を救う

宝島社 990円

――とはいえ、際限なく国債を発行したらハイパーインフレが起こるのでは。 森永:そこはぜひ言いたいところで、私がこの本を書いた動機のひとつに、MMT否定派の理由、賛成派の理由、双方ともにおかしいというのがあります。出版社の意向で本のタイトルこそ『MMTが日本を救う』となってますが、まえがきに書いたとおり、私はMMT支持派ではなくあくまで中立です。 MMTを批判するネットの声で「MMT支持派は、どれだけ国債を刷ってもハイパーインフレにならないと言ってる。だからトンデモ理論だ」というものがあります。しかしMMTではそんなこと一言も言ってませんし、むしろインフレになると言ってます。インフレの兆しが見えたら財政支出をやめて増税し、緊縮財政に転換しましょうと主張してます。 MMTをきちんと理解している人は、「いくら刷ってもハイパーインフレにならない」とは言ってないことをわかってるのに、ネットのMMT否定派は言ってもないことを「言ってる!」と叩くから、クソリプの見本市のようになっているのです。 ほかにも「MMT論者の主張が正しいなら、無税国家が成り立つはず」という発言もあって、これも「しっかりと勉強してください」という話です。 「モズラーの名刺」の通り、徴税あっての貨幣なので、無税国家ではそもそも議論が成り立ちません。不勉強のまま叩くから議論にすらならない。とりあえず私の本を読んでほしい(笑)。 支持している方も支持している方で、ちょっとMMTを曲解していると言うか、「MMTなら無限に金が出てくる! MMT最高!」みたいな人も散見される。そんなことはMMTでは言ってないです。 叩くのも支持するのも、私個人は勝手にしろと思うけど、MMTで言われてることに対して、支持や反対をすべきであって、言ってもないことを支持したり、反対するのはおかしい。 森永康平氏――それでは、著書のタイトルのようにMMTによって日本は救われることはあるのでしょうか? 森永:逆説的な話ですが、日本を救うには今の日本がヤバいという認識を持つ必要があって、実際日本はヤバいわけです。なぜ日本がヤバいのか、私の見解はいくつかありますが、そのうちの1つは97年くらいからずっと緊縮財政をしてきたからです。 MMTでは緊縮財政ではなく、積極財政を提唱するわけですから、打開策のひとつとなり得る。20年間緊縮財政をやってきたけど日本の財政はよくならなかった。ならば積極財政へ舵を切ったほうが、消費も増えて結果的に税収上がるんじゃない? というのが私の見解なのです。失われた20年に対して、このままでいいの? という問いかけとして、MMTがその入り口になればいいと思います。 <取材・文/栗林 篤 写真/林 紘輝> 【森永康平】 株式会社マネネCEO / 経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。新著『MMTが日本を救う』(宝島社新書)が好評発売中
不動産、マネー、ネットカルチャー分野を得意とするフリーライター。社会事情についても執筆する。著書に『サラリーマンのままで副業1000万円』(WAVE出版)。X(旧Twitter):@yuutaiooya
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