エンタメ

<純烈物語>拍手の代わりに万雷のシャッターを。報道陣の心を動かすステージ<第54回>

シャッター音にさえも熱がこもる

 後半3曲は『純烈のハッピーバースデー』からスタート。イントロが流れ、歌詞の冒頭へ入る直前に小田井はギュッと目をつぶり、気合を入れるようにしてから声を出した。  それまでMC中はニコやかにし、話を落としては客席から無音の笑いを取っていた男が、一瞬見せた生身の根性。初めて東京お台場大江戸温泉物語で純子と烈男の皆さんの声を聞いた時、一様に純烈の魅力としてあげていた「色気」を、目の当たりにした瞬間だった。  囲み取材のさいもスチール用(写真)として動きは必要なかったのに、小田井は一人おどけたアクションを繰り返した。9曲分のパフォーマンスを終えて誰よりもシンドいはずが、カメラを向けられるとサービス精神でじっとしていられない。思わず後上が「それにしても、ホント元気ですよねえ」と半ば呆れるかのように感心するほどだった。 純烈大江戸無観客3 もはや、一曲ごとにパシャパシャパシャと鳴り響くシャッター音にさえも熱がこもっているようにしか聞こえなくなっていた。拍手はできずとも、報道陣一人ひとりの思いがその音声に乗っかっていた。  10年目の純烈を包んだのは万雷のシャッター音――あの頃、そんな光景は夢のまた夢だった。奇しくもこういう状況下だからこそ、それをより実感できるシチュエーションが訪れた。  フルコーラスで歌うのは、これがまだ5回目ほどだという『愛をください~Don’t you cry~』も、とてもそのようには思えぬほどのクオリティーで歌い上げる。当たり前のことだが、4人とも息は上がっていない。  いや、たとえそうだとしても表へ出さぬようにしていたはずだ。目の前にオーディエンスがいて声援が飛んでくれば力にもなるが、それが望めぬ中で自身を支えるとすれば「純烈を純烈として全うする」というダンディズム以外にない。  一朝一夕のものではなく、10年という気が遠くなるような時間をかけて培ってきた姿勢。無観客だからこそより純烈らしさが垣間見られたのであれば、このDVDはまさに貴重な記録映像となるはずだ。
次のページ
純烈はどこまでいっても純烈なのだ――
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ