何気ない瞬間を噛みしめる、久しぶりの酒場
あてもなく街を徘徊していると、あるひとつの建物が気になった。
あそこに張り付いてる小屋、なんだろう?
小さな小さな居酒屋? そんなわけないか……
いや、ありえる!
一応、今日は金曜日なんだけど、このあと営業が開始するんだろうか? でも、もしここが酒場だったとして、この規模じゃあソーシャルディスタンスのとりようがなさそうだ……。
ともあれ、今は営業開始の気配もないので、探りを入れるべく、同じ建物に他に2軒入っている酒場のうちのひとつに入ってみることにした。
久しぶりの乾杯はこちら「福よし」で
コロナ対策のために窓を開け、扉も定期的に開けて換気をしつつ営業しているというこちらの店。そのため窓からの風が絶妙に心地よく、生ビールを飲むにはこれ以上ない環境だ。
完璧な生ビール!
お通しはどこか懐かしい味わいの酢豚風炒め物
「牛ロース焼山かけ」ってなんだろう? と頼んでみると……
え!? これで600円!
ちなみにメニューは「牛ロース山かけ」ではなく「牛ロース」と「山かけ」が同じ600円なので、並べて書いてあるだけだなんだそう。そんな小さな出来事が、久しぶりだとものすごく楽しい。
パリ:では3人で距離をとりつつ、かんぱ~い! ……ぷはー、たまんなすぎますね、生ビール。
清野:お通しもしみじみとうまいですよ。
パリ:家での晩酌も楽しいけど、こういう予想外の味に出会えて、それが美味しいみたいなのって、酒場ならではの楽しさですよね。
清野:「あー、この感じこの感じ!」って、些細なことに幸せ感じちゃうなぁ。
パリ:牛ロース焼もうま! これで600円って、いきなりとんでもない名店に入っちゃったんじゃないですか?
清野:大将も常連さんも「1軒目」に相応しすぎる顔ぶれですね。距離感、温度感、酒も料理も全てが理想的な1軒目。Kでは終始受け入れてもらえなかったのに、聖蹟桜ヶ丘はこんなにも我々のことを……なんか、今、うるりときました。
パリ:わかる! あ、大将、まだ 18時なのにジョッキでビール飲みだした(笑)。大将の適度なおもしろさも理想的だなー。
清野:さっきからカウンター越しに、大将が五月雨式にジョークを飛ばしてきますね。その場でふわっと雪のように溶ける、記憶に残らないテキトーなジョークを(笑)なんだか無性に心地いいや。
パリ:正直弟子入りしたいっす。最近コロナ禍に順応しすぎて、「もう外飲みはしばらくいいかなー。家最高ー。」とか思ってたんですけど、やっぱ外は楽しい。街は楽しい。
清野:人も楽しい。
「爆笑したのに記憶には残らない、華麗なジョーク。『ジョーク検定』があれば、大将は間違いなく黒帯の有段者だろう。いつか自分も、酒場でこういうジョークをかませる人間になりたいもんです」(清野)