最強家族と出会った「葛飾区お花茶屋」の夜/清野とおる×パリッコ
『ウヒョッ!東京都北区赤羽』(双葉社)第6巻をもって長年のライフワークともいえる赤羽シリーズを完結させたと思ったら、人気タレントである壇蜜との結婚報告で世間を騒がせまくっている漫画家、清野とおる。
そんな人生のお祭り騒ぎの真っ最中である2019年末。古くからの飲み仲間である酒場ライターのパリッコと、「赤」以外の色の名前がつく駅や街でただただ飲み歩くだけの当連載は、取材日が結婚発表前だったこともあり、平常運転でお送りします~。
さて、今回の舞台は葛飾区「お花茶屋」。2人とも初めて訪れるこの街には、どんな店や人との出会いが待っているのだろうかーー。
パリッコ(以下、パリ):お花茶屋、初めて来ました。勝手に「花やしき」とか「堀切菖蒲園」みたいな派手な感じを想像してたのですが、なんとも静かな街ですね。
清野とおる(以下、清野):確かに、もっとメルヘンでファンシーな駅を想像してました。きっと駅を降りた瞬間に、胸が小躍りするようなモノであふれかえっているんだろうなって。最低限、お花畑くらいは広がっているんだろうなって。
パリ:うんうん。ただ、想像とは別の意味で、我々がワクワクしてしまうような雰囲気ではあります。
※コイル状の線材を真っ直ぐに矯正し、所定の長さに切断する機械のこと。医療用器具(注射針等)から建築用鉄材まで幅広い分野で利用されているのだとか。
どこか怪しい味わいのある街並みを堪能しながら駅周辺をひととおり散策してみていると、やがて、古い飲み屋やスナック、商店が密集した、我々好みのエリアが突如あらわれた。ここしかない! と、その中の一軒の酒場に入ってみることにする。今思い返せば、この夜お花茶屋で出会ったすべての役者は、この局地的な一角に揃っていたのだった。
清野:なんというか、絵に描いたようなコワモテの、あっち系の大将ですね(笑)。写真をお願いするのもこわいし、いっそ絵に描いてやろうかな!
パリ:ほんとですね! ……あれ? 井野さん唇から血が出てません?
井野:すいません。あの大将を見てたら緊張したのか、唇を噛んでしまいました。
清野:うわー! けっこうダラダラ出てますよ、井野さん! 何かあったら俺が死ぬ気で助けるので、その隙に逃げてください! そして僕の死に様を後世に語り継いでください!
井野:ありがとうございます。しかしまさかこの連載で流血することになるとは……。

予想に反して寂しげな駅前から徘徊をスタート
1軒目:昔ながらの大衆酒場「F」
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):@paricco
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