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がんで余命180日のおっさんがやりたい放題!/藤沢数希

―[モテる映画工学]―
~映画『グッバイ、リチャード!』~
モテる映画工学

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がんで余命180日と宣告された大学教授のおっさんがやりたい放題!

 ジョニー・デップ演じるリチャードは英文学の大学教授で、綺麗な奥さんと可愛い娘と何不自由なく暮らしていた。しかし、突然、がんで余命180日と宣告されてしまう。追い打ちをかけるように、奥さんが不倫をしていることも発覚。もともとちょいワルおやじ風のリチャードであったが、がん告知後は完全なワルいおやじとなって、授業中に酒を飲むわ、学生と不適切なことをするわ、やりたい放題を始めるのだった。  リチャードの授業では、学生は文学作品をたった1冊だけ読み、学生が自分で講義をすることになる。しかし、それらは就職活動の助けにもならなければ、将来金儲けに役立つこともない。興味がない学生、そして何より喜びのために本を読んだことがない人間は、すぐに単位をやるからすぐに出ていってくれ、と追い出してしまう。残った学生たちと授業を始めるのだが、教室から抜け出し、昼間っからみんなでパブに行ってしまうのだ。  恋愛の観点からは、学生たちとパブで酒を飲みながら「授業」をしているとき、リチャードがウエイトレスを勢いでナンパして、そのままトイレで……というシーンがある。それを見ていた真面目そうな女子学生が目の色を変えるのだ。女はほかの女をいとも簡単にものにできる男が本能的に大好きで、そういう男を尊敬するようにできているのである。女はほかの女にモテる男が好きなのだ。  ジョニー・デップはすでに60歳近いが、まだまだお盛んそうで、それを見るだけでも勇気と希望をもらえる映画である。死と向き合う中で、生の意味が浮き彫りになるのだ。
グッバイ、リチャード!』 監督/ウェイン・ロバーツ 出演/ジョニー・デップ、ローズマリー・デウィットほか 配給/キノフィルムズ 8月21日より公開
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
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