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冷凍食品なのになぜうまい? キンレイ鍋焼きうどんの開発秘話を聞きにいく

調理・加工技術の進歩で専門店の味に

 キンレイに限らず、冷凍食品の質向上には、理由があると西川氏は言う。それは、プロの料理人が専門店で行う調理技法を、キンレイのような食品メーカーの努力により、工場で再現できるようになったからだ。  たとえば「五目あんかけラーメン」。具材を油にさっと通す中華の「油通し」という下ごしらえの技法を工場でも再現している。その結果、野菜のシャキシャキ感を実現。西川氏は続ける。 「キンレイがすごいと思うのは、鉄鍋調理も再現していることです。鉄鍋を使えば香ばしさは出ますが、焦げるリスクもあるため、使用を控えるメーカーが少なくありません」  筆者も含め多くの読者は、冷凍技術が進んだから冷凍食品はおいしくなった。そう思っていなかっただろうか。だが実際は、大量の食品を加工・調理する技術の進歩こそが、冷凍食品のレベルアップを実現していたのである。ただ、言うは易く行うは難し。言い方を変えれば、技術があるかないかで、味の良し悪しが決まることになる。  また冷凍食品は―18度以下の低温で保存するため、菌が繁殖しない。そのため保存料を使う必要がない。加えて化学調味料などの添加物を極力抑えていることも、おいしさの理由と言えよう。端的に言えば、家で化学調味料から作る出汁よりも、キンレイの冷凍出汁の方が味はもちろん、体にも優しいのである。  実際、試食の寄せ鍋の出汁はすべて飲み干したが、その後、喉が乾くようなことはなかった。山本氏の「社会人の娘は、幼いころから冷凍食品を食べて育ちましたが超健康です!」とのコメントにも、説得力が宿る。

マーケティングはしない?

 冷凍食品全体の質がアップしている中で、キンレイならではの魅力や強みはどこなのか。ゲストの2人に問うと、次のような答えが返ってきた。 「キンレイはおもしろい会社です」  何がおもしろいのか。新商品を開発する際、市場調査や価格帯を選んでから商品を開発するのが一般的だろう。いわゆるマーケティングだ。ところがキンレイでは、しない、とは発言していなかったが、消費者がおいしいと思う、本物の味を届けることができるかどうか。そちらへの注力度が強いというのだ。  実際、キンレイでは通販限定だが「おとり寄せコレクション」というラインナップがある。同商品群は、先の材料よりもさらに厳選した素材を使うことで、より上質な味を実現。ちなみに同コレクションの「鍋焼うどん」の価格は800円。一般商品の倍以上だ。

原価5000円以上の鍋も

 それだけではない。「味の探求プロジェクト」なる社内プロジェクトでは、従業員が全国各地をまわり、厳選素材を吟味。すごいのは、集められた食材を使い、実際に商品を作ってしまうことである。ただこの商品が市場に出回ることはない。得意先などへの贈答用で、山本氏は一度食べたことがあるそうだが、「すごくおいしかった!」と絶賛。ちなみにその商品は「THE鍋焼うどん」と呼ばれているそうで、原価はなんと5000円以上。うまいに、決まっている。  原価5000円の商品は置いておくとしても、ゲストいわく、コロナ禍の影響で冷凍食品の人気が高まり、中でも高価格帯の商品が注目。各社がこぞって高価格帯商品の開発に注力しているそうだ。もしかしたら、キンレイのプレミアムシリーズのさらなる高級ラインナップが、発売される日が来るかもしれない。 「THE鍋焼うどん」を食べてみたいと思ったのと同時に、改めて次回は、実際にキンレイの工場を訪れ、今回紹介したこだわりの素材や調理を、この目で見てみたいと思った。
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