──アイドルと舞台女優では、まるで別物みたいに捉えていたのですが。 ソニン：いや、確実に繋がっています。だって、女優って人生そのものが出ますから。役者にとって経験というのは何よりの財産で、その引き出しは多ければ多いほど表現の幅が広がるんです。私の場合、普通の人が経験できないようなことを若いうちにやってきた点は非常に大きいと思いますね。 ──ソニンさんってスタッフから言われたことを従順に聞いていた印象があるんですよ。マラソンとか登山の無茶振りにも全力で応えていましたし。 ソニン：そうするしかなかったんです。当時は「私の信念はこうです。私の個性はこうです。だから、こういうことをやらせてください」と言えるだけの確固たる自信や客観性を持っていませんでしたから。ましてや歌の技術もなく、芸能界の仕組みもわかっていない。そんな私にできることといったら、和田社長やつんく♂さんをはじめとした大人たちの期待に精一杯応えるだけだったんですよ。 ──真面目ですね。 ソニン：うん、仕事に関しては自分でも真面目だと思います。もう限界だと思って音を上げるまでは、とにかく全力で頑張り続けるのが私の中では自然なことなので。 ──とはいえ、たとえば『カレーライスの女』ジャケットの衝撃的な裸エプロン姿などは「そこまでしなくても……」という声も多かったはずです。 ソニン：たしかにそういう目で見ている人は多かったでしょうね。私の中では「あとがない」という気持ちが常にあったんです。住んでいた神戸を離れて、高校も通信制に切り替えて、「ここに懸けるんだ」という気持ちで活動していましたから。ジャケットに関しても他のことに関しても「やるか？」「地元に帰るか？」という二択しかなかった。もし私に取り柄があるとしたら、一生懸命やることくらいしかなかったですし。 ──EE JUMPは突然のメンバー脱退もあり、惜しまれつつも解散してしまいました。もしあのまま順調に活動を続けていたら、今頃はどんな道を歩んでいると思いますか？ ソニン：どうだろう……。ずっと音楽を続けていたかもしれないな。少なくても今みたいなかたちで演技をやることはなかったと思う。それくらい歌手時代は女優というものが遠い存在だったんですよ。プライベートでは女優の友達もいたけど、「ねぇねぇ、セリフってどうやって覚えるの？　忘れたりしないの？」とか無邪気な気持ちで尋ねていましたし。役を演じるってことが想像つかなかったんです。 「まさか自分が演技をするとは」と当時を振り返るソニン。しかし『高校教師』(TBS系、03年)出演を皮切りに、舞台、ミュージカルへの出演など、女優としてのキャリアを積み上げていく。「演技の虜になった。取り返しがつかない一発勝負のスリルに魅了された」とその面白さについて語るが、舞台で順調に活動を続けるなか、大きな決断をして世間を賑わせた。12年、芸能活動を休止してのニューヨークへの留学だ。 ※近日公開予定の後編へ続く ＜取材・文／小野田 衛　撮影／丸山剛史＞出版社勤務を経て、フリーのライター／編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』（扶桑社新書）、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』（竹書房）。