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手書きの『ほぼ日手帳』が20年愛されてきた理由とは? 糸井重里氏を直撃

手書きには、デジタルにはない感情や思い出がこもっている

「オリジナル」の使用例

1日1ページ、自分の好きなように使える「オリジナル」の使用例

――手で書く(描く)機会の少なくなってきた今、手書きの大切さや魅力というのは何だと思いますか。 糸井:デジタル入力って「人に書いてもらうこと」なんですよね。自分の考えを他者の字で貼り付けている。機械が「ソレハ○○デス」と変換しているわけで、自分の声じゃなかったりするんですよね、けっこうな部分で。  だから、たぶん脳の働きも違うんじゃないかな。目の前に白い紙を置いてペンを持って「さあ考えを始めるぞ」っていう時に丸を書いたり、丸の中に十字を書いて言葉を入れたりして手を動かしたほうが、アイデアも出やすいように思います。
「weeks」の使用例

「手帳はかさばるから……」と敬遠する人向けの、1週間の予定を2ページにまとめた「weeks」の使用例

――手書きの場合は、後で見返すと当時の喜怒哀楽なども字に表れているのがわかりますね。 糸井:そうですね。たとえば自分がスポーツ選手だったとして、自分そっくりのロボットを作って打席に立って大活躍しても、操縦しているだけだったらやっぱり自分じゃないよね。「チキショー!」って言って砂飛ばしてプレーしているのが自分なんで。  その意味では、手書きというのは「キャンプでご飯を炊く」みたいなもので、その時の自分の表情や動きまでが思い出に残る。

後で「見返す」ということが、手書き手帳のいちばんの特徴

糸井重里さん2――一方で、デジタルのスケジュール帳というのは、後で見返すことはあまりないですよね。 糸井:その「見返す」っていうことが、手書き手帳のいちばんの特徴かもしれません。『ほぼ日手帳』は、使い終わったら捨てちゃうものではなく、本棚にとって置くことを考えてしっかりと作っています。  見開きに5年分の同じ月日の記録をつけられる『ほぼ日5年手帳』は、まさに「見返す」目的のもとに作りました。『5年手帳』は、途中が抜けていてもいいから、とにかく思い出したらつけるようにしていれば、必ず後でおもしろい発見があります。  書く欄はちょっとしかないんだけど、それなりに「誰々と○○を食べた」とか「○○の打ち合わせ」とか書いてあるわけだよね。それが何と1年後もその日付のあたりで同じことをしているの(笑)。びっくりするよね。季節ネタなんだよね、「生きている」っていうことは。「あの人とはいつもこの時期に会うんだ」と思い出したり、それを見てまた連絡をとったりしてね。
「5年手帳」の使用例

「5年手帳」の使用例。誕生日や記念日など、過去を自然に見返すことができる

――『1年手帳』だと意識的に見返さないとならないけれども、『5年手帳』は使いながら自然と過去を振り返ることができる……と。 糸井:自分や他人の成長もわかりますよね。子どもの成長記録とか。写真はデジタルのほうが便利ですが「こんな言葉をしゃべった」とか「これができるようになった」とか、写真に記録できないものはデジタルよりも心に残る。子供が結婚する時にあげたら、ずっと大事にしてくれそうですよね。  ほかにも、夫婦喧嘩した時に捨てようと思った人とかね(笑)。ダンナさんの悪いことばっかり書いていてさ。でも捨てないでいたら、あとで仲直りして。しょうがないからそこを糊でべったり貼り付けて見えないようにしたとか。おもしろいよね。
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「何が新しいか」よりも「何をいいと思うか」
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