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<純烈物語>最年長でありながら自分の個性は “動”と言える小田井涼平ののびしろ<第70回>

無観客とは思っていなかった

 目の前にオーディエンスがいるならまだしも、無観客でそこまで自分を持っていけるのも、プロならばと言ってしまうのがはばかれる。あの日、対戦相手はカメラの向こう側だけでなく、小田井の目の前にもいた。 「僕はあのライブ、無観客とは思っていなかったんです。マスコミの方がいてくれたので。お客さんとまた違うプロの目線でいろんなことを伝える皆さんが見ているというのは、僕の中では特別なステージでした。ないじゃないですか、なかなか。そういう人たちが見ている中でやるのはある意味、手抜けないですから。  ファンだったら普段からキャッチボールしているので、そこにボールを投げれば返してくれる。そういう方たちじゃないわけですよ。怖かったですもん、俺。怖かったし、ラウンドでマスコミさんのところにいった時もメッチャ小芝居した憶えがあります。アホちゃうか、そんなにライブやれて嬉しいんかと思ってもらうためにね」  現在は一般人で、元プロレスラーの澤宗紀さんが現役時代に使っていたフレーズとして「やりすぎぐらいがちょうどいい」なる名言があった。エンターテインメントは、過剰に描かれるからこそ伝わる。  一般的にはあり得なくても、作品として落とし込められたものであればリアルを超えたリアリティーとなり心に刻まれる。その“やりすぎ担当”が最年長者であるところも、純烈の味わいの一端を担っている。 「それは僕が常日頃言っていることなので。これだけ年齢差の開きがあるグループだと、ファンの方々から体が大変でしょうというお気づかいの言葉をいただく。もちろんありがたいんですけど、年上やけどあんなに動くんやという印象だけが残ればいい。僕の個性は“動”というキャラクター。後上君との年齢差はそれで埋めるという感覚ですわ。  後上君は自分のリズムで普通にやってくれればよくて。だって若い分、エネルギーがあるという部分に関しては、僕がファンだったら49歳のおっさんに何も期待しないですよ。それなりに頑張ってくれはったらええですよっていう存在になるんです。だけどそれで終わるのも悔しいから、俺のファンでなくていいんでなんとなくあいつに目がいくなというのを残したいんです」  それが爪痕というものになるのだろう。とはいえ、自分のポジションが“動”と言い切れる小田井涼平は肝が据わっている。言葉にするだけで終わらせたくないから、数ヵ月前よりついに走り込みを始めた。

2020年、自身ののびしろを見いだそうと動き続けた

 また、ステージがない中で来た芝居やドラマの仕事もやるからには向上させたい。純烈のMCが面白く、ましてや元は役者ならソツなくできると見られがちだが、本人的にはまったく勝手が違うとなる。 「純烈って、アドリブが多くて用意したものがない。その日の気分で喋っていいからラクなんですよ。用意されているものをできるのが役者であり、しかもそれを自分の言葉として本当はセリフなのにセリフとは思えないように言える役者さんはすごい。セリフ憶えとか、会話をしている間(ま)とか臨機応変さが芝居には求められるのに、そういうのができへんようになったなあと気づかされた。  台本っていう縛りをつけることで、これを憶えてやらなければならないというのをやった方がええなと思って、コント・芝居を始めたんです。YouTubeでやっているのはワークショップです。お芝居はウチの事務所の俳優部であげてもらって、実地訓練のようにお客さんに見てもらうものを作る感覚でやっています。誰も見てないところでかけ合いをやるのはできると思うんです、緊張感がないから。世に出すことで、緊張感が持てると」  ライブには直結せずも、そこで培ったスキルは2021年の純烈にフィードバックされるはず。2020年は、いったん新しいことは横に置いて原点に還り、コロナ禍の中で薄まったものの濃度をあげる作業に充てた一年と言えた。 「なかったことにしたい2020年」の中でも、小田井は自身ののびしろを見いだそうと動き続けた。来年の今頃には、これらのことと線でつながったものが具現化されているに違いない。 撮影/ヤナガワゴーッ!(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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