更新日:2020年11月28日 09:15
エンタメ

金髪モヒカンの27歳がつくば市議に。「勝手につくば大使」は、なぜ当選できたのか

とにかく金がない大使の選挙活動

 3年前の時点で、収入は3年間で2万円。活動費はもっぱらアルバイト代で……という大使の万年の悩みは、「とにかく金がない!」ということ。一般的な市議会議員選挙の費用は200~800万円と言われているが、いったい大使はどのようにして費用を用意したのだろうか。
選挙ポスター

「勝手につくば大使」の選挙ポスター

「選挙活動に合計31万円しか使っていません。1万円はガソリン代、残りの30万円は供託金(のちに返還される)です。週6日、アルバイト先の居酒屋で死ぬほど働いて必死に貯めました。選挙カーやウグイス代など、一定数の票を取れば行政が出してくれますが、私は自家用車のつくば号(ナンバーが298)1台です。小さい頃から選挙カーというものがうるさくて嫌いでした。選挙カーで大声を出しながら街を回れば票を入れてくれると思っているなんて、市民を舐めるなと幼心ながらに感じていたんです

つくば愛を叫び、2401票で当選

 ショッピングモールや交差点などに立ちながら、大使はひたすら演説をした。朝は始発から、駅の前でおじぎだけ続けた。初日はなかなか言葉が出なくたどたどしかったが、「とりあえずやってみよう」という気持ちで立ち続けた。すると自然に、つくばに対する愛が言葉として出てくるようになった。「俺はつくばが好きなんだ! つくばの人たちに恩返しがしたい。ぜひ投票してくださいお願いします!」そう叫び続けると、車から手を振ってくれる人が増えてきた。 「当然ですが、選挙なんて初めての経験なので手ごたえというものがまったくわかりませんでした。手を振ってくれる人はいるけども、わざわざ投票所まで行って“勝手につくば大使”と書いてくれる人なんて、よっぽどじゃないといないのではないか。ふたを開けてみたら30票しか取れずに最下位落選なんてぜんぜんある。そんな得票数だったら、供託金は返ってこないし、ポスター代もビラ代も自腹になる。80万円以上の借金を背負ってまたさらに沈む……」
当選

2401票で堂々の当選

 開票日はひとり家で震えながら、つくば市のホームページをひたすら更新していたという。結果は2401票で堂々の当選(定数28人中、19番目の当選)。現実だと思えず、力が抜けてパタリとそのまま眠りについた。
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市議になって何をするか
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元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion

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