そもそもAクラスはベンツなのか?
近ごろのメルセデス・ベンツは、ラインナップをどんどん拡充させていますが、特に2013年にデビューした2代目Aクラス以降は、CLA、GLAといったAクラスの派生車種がどんどん増えている状況です。この2代目Aクラスの登場までは、こういったエントリークラスは、AクラスとBクラスぐらいしかありませんでした。
前席と後席。前席のシートポジションは様々な調節が可能。後席は日本車のようなリクライニング機能はない。安全性を優先してのことだと思われる
そして、このような小型ベンツに対して、「(そのサイズのクルマなのに)ベンツの必要ある?」と馬鹿にする人がいます。確かに、傍から見ると可愛らしい見た目なため、そういうことを言いたい気持ちもわからないわけではありません。
しかし、実際にAクラスに乗ると「これは紛れもないベンツである」とわかります。この小さなAクラスからも、しっかりベンツ哲学を感じ取れることができるのです。
SクラスとCクラスを所有する私ですが、そんな私がこの2代目Aクラスに乗ると、内装の雰囲気はEクラス並みだと感じます。
高級感のあるコックピット
もちろん、このAクラスと同世代のEクラス(W211)のほうがより高級感がありますが、Cクラスよりも上といえるほどの質感なのです。
初代Aクラスは内装が安っぽいと不評だったため、2代目では“ベンツらしい高級感”を重視したのでしょう。初代Aクラスのポップな内装は、それはそれで凝っていると思いますが、デイリーユースではこの2代目の“ベンツらしい豪華な内装”のほうが満足度が高いと思います。
また、今回私が狙った「エレガンス」というモデルには、いかにも高級ベンツといった要素が満載。左右独立のエアコンパネルは、まさにEクラスのような高級感がありますし、ウッドパネルも日本車のような木目調ではなく、本物の木目が使われています。
エレガンス仕様には、左右独立エアコン、本木目など高級車らしいアイテムが備わる。カーテンエアバッグも標準装備。
ちなみに、今回買った車両には、パークトロニックなどのオプションが備わっていたのですが、実はこの装備、W140の時代には600(Sクラス)にしか付いていなかったため、それを知っている私としてはものすごい高級要素だと感じてしまいます。
はたから見ると、ベンツエンブレムをつけただけの安いクルマに見えてしまうAクラスでありますが、その内装の高級感は国産小型車とは全く違います。軽自動車とは比べ物にもなりません。
次に走りについてですが、この小さなA170の乗り味は、まさにベンツそのものであります。普段、W140やW202に乗っている私が、A170に乗り換えても「グレードダウン感」を感じません。
もちろん、パワーがないため加速感はSクラスには敵いませんが、基本的な性能はまさにベンツの動きなのです。
そういった“ベンツな乗り味”は、一般道の低速域でもしっかりと感じとることができます。一般道を走っていても退屈ではないですし、3時間運転しても疲れません。ちなみに日本車の場合、高級車でも一般道を1時間ぐらい走ると腰が痛くなってきます。
小型車ながら、長距離も疲れない。近所の買い物から旅行まで、快適にこなすことができる。
また、高速道路では欧州車らしくビシッと安定。車高が高いパッケージでありながら、国産高級セダンよりも安定感があるのです。
このようにA170をべた褒めしてしまっている私ですが、本当に「言うほど良いか?」の裏付けも、きちんとあります。
この車両に5万円カンパしてくれた友人が、このA170よりもやや新しい世代のCL550に乗っていて、彼と一緒に乗り比べを実施し、50kmほど走ったところ、彼も「Aクラスは紛れもないベンツである!」という結論になりました。
ほぼ同世代の2台。最高級だったCL550と最も廉価なA170
ベンツといえば安全という印象がありますが、このAクラスもまた安全なクルマだといえます。このA170は2005年にデビューしたクルマですが、Webで公開されているユーロNCAPでのテストデータの結果は上々。You Tubeにはクラッシュテスト動画もあり、サイドポールテストも難なくクリア。もちろん、カーテンエアバッグは標準装備です。
また、メルセデスが実施したテスト動画では、ユーロNCAPでテスト内容に含まれていない衝突実験も行われていました。テストの点を良くするだけでなく、実地での安全性にもしっかり配慮しているわけです。