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プロ未勝利、28歳で引退した甲子園春夏連覇のエース・島袋洋奨のいま

 しかし2年目は二軍で31試合登板(通算回数65回1/3)2勝7敗1セーブ、防御率5.51で終わる。それでも2年目のシーズン終了後に台湾で行われたウインターリーグに参戦し、8試合3勝1セーブ、防御率2.20の成績を残すことができた。一軍でブレイクするための登竜門的なウインターリーグで一定の結果を残したことで、3年目の春季キャンプでは、一軍キャンプに相当するA組に初めて合流する。 「投内連携やサインプレーがめちゃくちゃ苦手なんです。投内連携はストライクを投げてからホームへダッシュするんですけど、『ストライク入るかなぁ……』と投げる前からいろいろと考えてしまうんです。ベテランの川島慶三さんや本多雄一(現一軍内野守備走塁コーチ)さんから『楽しくないのか! もっと楽しめ!!』、『顔が引きつっているぞ、おまえ』と声をかけられたりしました。やはり一軍にいる選手は野球を真剣に楽しんでいるなと感じました。高校時代や大学入学直後の頃は投内連携とか好きだったんです。セカンドへの送球なんか、どれだけ低い球で放れるかというゲームのような感覚でやってましたから……。いつからか苦手になり、意識して余計に緊張もどんどん増していくって感じでした」

左肘手術と育成契約

 結局、島袋は3年目のシーズンは、8月下旬に左肘遊離軟骨除去手術もあって一度も一軍で投げることはできなかった。その後、オフには支配下登録選手を外され、育成選手契約となった。背番号は「39」から「143」と三桁となり、大卒四年目の育成選手となれば年齢的にも後がない。 「3年目のオフに一度クビになったのは自分にとって衝撃的でした。成績を残してないのでクビにする人員の候補に入っていたのは当然といえば当然です。手術をして投げられないことを考慮してもらい、リハビリも兼ねて育成で残してくれたんですが、1年間だけだろうなと思っていました」  仕切り直しのプロ4年目は二軍で6試合しか投げられず、あとは3軍暮らし。それでも、球団はもう1年だけ契約してくれた。 「三軍にいちゃいけないとずっと思いながら、なかなか二軍に上がれなくて……。1年目の初登板よりスピードは引退する最後の年のほうが出てましたよ。4年目が150キロで、最後の年が149キロまで行きました。大学の途中からスライダーが投げられなくなったんです。一昨年からやっとスライダーを投げられるようになり、徐々に戻りつつあった感じにはなりました。  最後の年は気持ちよく楽しく野球をやりたいと思ってやってきて、二軍で3試合だけ投げてあとはずっと三軍でした。これだけやって成績が残せず上にあがれないのなら、ここまでかなぁと思い、決意しました」

ユニフォームを脱ぎ、沖縄へ戻る

 ソフトバンクから自由契約を言い渡された島袋は複数の独立リーグからの誘いをすべて断り、トライアウトも受けることもなく、野球と別れを告げた。結局、プロ5年間での一軍登板は、ルーキーイヤーの勝ち負けなしの2試合のみで終わった。  28歳で引退し、否が応でも第二の人生を歩み出さなくてはならない。普通の人間なら突然会社をクビになれば行き先もなく焦るもの。しかし、学生時代から誰もが認めるほど実直に野球を取り組んできた人間を世間は簡単に見捨てることはない。知り合いを経由して幾つかの業種からの誘いの声があった。大事な帰路に立たされた島袋は慎重を期すため、一度沖縄に戻り、恩師である興南の監督我喜屋優に相談をした。そこで、いろいろと話した上で、母校にお世話になることを決めた。
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監督として甲子園を目指す
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

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