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元盗塁王・屋鋪要「野球選手は嫌いなんですよ」の真意とは

屋鋪要

屋鋪要といえば俊足のイメージが強いのだが、ゴールデングラブ賞に5回も輝いた守備の名手でもある

 80年代、スーパーカートリオとして一世を風靡し、3年連続盗塁王、ゴールデングラブ賞5回と大洋、巨人で俊足名手として名を馳せた屋鋪要氏。98年一軍外野守備兼走塁コーチ、’99、’04、’05年二軍外野守備兼走塁コーチと、二度に渡り巨人でコーチを務めている。前編では鉄道写真家としての活躍する今を語ってもらった。だが、屋鋪氏には鉄道以外にも、聞けば聞くほど驚く趣味があった。

野球選手が嫌い……の真意

 現在は、野球教室を開催している傍ら、鉄道カメラマンとしてSLを撮り続けている鉄道文化人の顔もある。そんな屋鋪から突然の「野球選手は嫌いなんですよ」発言には、こちらも予想だにしていなかっただけに、一瞬、間を置いた。しかし、屋鋪はそのまま話を続ける。 「プロ野球選手ってわがままでしょ。全部が全部じゃないですけど。一般人のほうが断然いいですよ」  屋鋪は少しはにかみながら話す。元来、一つのことを集中してやるタイプのため、現役時代は野球だけに没頭していた。引退後、コーチ業に携わった後、少し時間に余裕ができ、子供がきっかけでSLにハマった。それ以来、知らぬ間に蓋を閉めていた好奇心が心の奥底からむくむくと湧き出だし、いろんなものに興味を抱くようになる。一つのことをとことん突き進める屋鋪は興味を持った分野に対して、本で調べたり、人にアドバイスを求めたりすることを厭わなかった。  そこで一般人と触れ合い、野球人との関わりとは違った楽しみや喜びが生まれてくる。想像するに、プロ野球選手のわがままというのは、極めた人の特権的な部分でもあり、それが屋鋪にとって他の世界を知ってしまったがゆえに微妙に違和感を持っているという意味ではなかろうか。

現役時代は落語にハマり、今はラベンダーを育てる日々

「今、花を育てるのにハマっているんです。ラベンダーです。いろんな種類があっていいですよ。プランターやいろいろ揃えても2000円くらいあればできますからいいですよ」  まったく趣味がない筆者がラベンダーに興味を示すと、おもむろに鞄からラベンダーの本を出して渡してくれた。 「今はこれを読んでます。楽しいですよ」  屋鋪は優しく微笑みながら語りかける。3回も盗塁王をとっただけあって、こちらの機微を読むのは朝飯前なのか、スッと懐に入ってくるのが上手い。一見、顔が気難しい芸術家のように見えるが、非常に柔らかい口調での笑顔がなんとも言えないほど温かく見える。  花を育てるために一番必要なことは、肥料や水、環境ではなく、愛情だという。話しかけながらきちんと水をあげると花の寿命は延びるという科学的データがあるほどだ。現在、仕事としてやっている野球教室の指導においても、挨拶や振る舞いといった教育をしながら子ども達に基本の技術を徹底的に指導しているという。  ただ技術を教えるのは、ただ花に水をあげているのと一緒。いろんな環境下の中で自ら考えて切り開く力を養うために教育していくことが大事で、きちんと愛情を注ぐことが結果に繋がる。それは人間も花も一緒なのだ。 「プロに入ってから落語にハマりましたね。昔、ウォークマンが流行った時に、落語のテープを貰って聞いたら面白いんです。それから落語のテープを買いました。枝雀に始まってやっぱり志ん生ですね。米朝は話が上手ですね。巨人時代にウォークマンで落語を聴いていたら槇原が『屋鋪さん、何を聴いて笑ってるんですか?』って言うもんだから、落語を勧めてやったら、あいつも落語にはまってましたよ」  鉄道、模型、オオクワガタ、切手、絵、花、落語……どれだけ趣味があるんだというほど、多趣味であり、どれもかじって飽きたら終わりではなく、一つ一つを極めていっていることが凄い。一生の趣味になるといわれている“釣り”について聞いてみると、 「釣りも好きですよ。でも、今、他のことが手いっぱいで入る余地はないですね」  何でもかんでも手を出すのではなく、きちんと吟味して無理のない範囲でやり続けることが大事であるという趣味の極意を教えてくれた気がする。
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