お金

「ボロボロのカラオケが僕たちのドンキだった」借金500万円男、ラジオ出演に何を思う

田舎と都会の南北問題

 上京してくる時、同級生が見送りにきた。 「ジャニーズの友達できたら紹介してくれ」 「テレビに出る時は教えてよ」 「帰ってくるときはディズニーランドのグッズを買ってきて」  日本が抱える「南北問題」も、みんなが思うよりずっと深刻なのだ。  東京に出てきた田舎者はまず「田舎臭さ」の消臭からこだわる。僕が最初に決めたのは「芸能人にホイホイ声をかけないこと」だった。テレビに出る人間は9割以上が東京の人間で、三歩歩けば芸人やモデルとすれ違うと思っていた僕は、芸能人に全く興味がない素振りをすることで東京に擬態しようとしていた。  友達と遊んでいる時に渋谷でドラマの撮影をしていたとしても、絶対に行かなかった。東京出身の連中がこぞって野次馬に向かった時、「勝った」と思った。どうだ、僕はテレビ人なんかに興味を示さない生粋の都会人だぞ、と。今思えばテレビに出るということ自体がすごいので東京で生まれ育った人も野次馬には行くし、何なら肩肘を張っていない分、より自然に「東京人」だったのだが。  回想終わり。

ラジオ

 ラジオのスタッフの方が少し電話で話せないかと言われ、僕は不承不承とした態度で電話に応対した。内心ウキウキだったが、5分間芸能人と話せることに浮かれて過去の自分を裏切るわけにはいかなかった。 「僕、こういうゲストとして出ると毎回まとまりがなくて滑っちゃうんですけどいいですか?」 「いえいえ、あなた自身のリアルな言葉で視聴者の若者に何か伝えて欲しいんです。僕たちは生きづらい人に勇気を与えたいんです」  なんと熱い言葉よ。僕を通して世の中で塞ぎ込んでしまっている人を元気付けたい、そういうことだったのか。 「僕でよければ、ぜひよろしくお願いします。」  相手が電話を切る音を待って通話終了のボタンを押す。歴史が変わる音がした。  当日。僕が世の中の若者に赦しを与える時刻。タバコを何本も吸いながら着信を待っていると非通知が届いた。普段はアコムやレイク、弁護士事務所なんかがかけてくる僕の携帯だが、この時ばかりは疑うことなく電話に出た。 「もしもし」 「もしもしー! お名前どうぞ!」  と、徳井だ……! いや、ここは敢えて徳井さんと呼ばせてもらおう。なぜならもうあなたは野球選手やアイドルなんかじゃない。生身の人間であることをこうして自覚してしまったからだ。 「い、犬です……」 「ええ?」 「い、犬という名前で、Twitterとyoutubeをやっていて……」  僕は今日、若者に伝えたいことがある……! 「それで、どうして縁を切ったの?」 「ありきたりなんですが、大学を中退してそのまま……。今は工事現場で働きながらギャンブルで作った借金を返しています」 「開き直ってるクズ、いいねー!」  大体こんな感じだったと思う。ごちゃごちゃ話しても円滑に進まなくてスベるんじゃないかと思ってドキドキしていたが、会話が変に流れないように全部徳井さんが質問で誘導してくれた。終始ギャンブル中毒で破滅した話をしてしまったが、少しはウケていた気がする。結局10分くらいの通話で終わり、緊張して最後の方は早口になり、電話を切る時も、 「ありがとうございました」を「エイーッス」と省略してしまい、堂々たるクズ、のような印象を2時間のネタとしてこすられ続けてしまった。  クズになってもいいよ。終わってしまったことはもう笑えるようになるしかないじゃん。そう伝えたかったが、伝わっただろうか。  ラジオが終わる。お母さん、お父さん、僕、ラジオに出たよ。  徳井さんが締めに入った。 「犬や西田(ラランドというお笑い芸人の人)くらいまでダメにならないと縁は切れないからね。さて、今週はここまで。来週探している人は『ギャンブルでの武勇伝を語りたい人』です。お楽しみに!」  いや、来週こそ僕の出番じゃないですか?  いつの間にか2時間ずっとラジオを聞いていた僕は、携帯に向かって誰も聞いていないツッコミをしていた。  ご視聴ありがとうございました。開き直っているクズです。<文/犬>
―[負け犬の遠吠え]―
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩
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