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10年後の日本に恐怖。80歳まで働く、外資に買収される企業も

日本の人口動態から見る未来

生き残り戦略

イラスト/田川秀樹

 一方、作家の橘玲氏は日本の人口動態から未来を読み解く。 「今起こっている日本的雇用の崩壊、世代間格差の拡大、現役世代の収入が高齢世代に吸い上げられる現象などは、20年以上前に指摘されていたことばかりです。人口動態を踏まえれば’20年代にこうなることは誰でもわかるのに、政府は無策のままでした。  ということは、今の人口構成から10年後、20年後の日本も見えてくるわけです。『人生100年』が現実のものとなれば、生涯現役が当たり前になります。能力のある人は長く働き、年金しか頼みの綱がない人との“老老格差”がどんどん開いていくでしょう」

あらゆる差別をなくしていくと、必然的に能力主義の社会になる

 しかも、これは高齢者間だけの問題ではない。近年はさまざまな場面で性別や年齢差などでの差別が是正され、リベラルな社会が実現されつつあるが、皮肉なことにこれが格差を拡大していく。 「あらゆる差別をなくしていくと、必然的にメリトクラシー(能力主義)の社会になります。評価基準として認められるのは学歴、資格、経験だけで、これらの有無が格差拡大に繋がっていきます。  現在の40~50代は、来るべき能力主義社会と生涯現役社会のために、専門性や実績をつくることに奮闘する期間。これまでの日本社会は、会社に所属することが生活保障でしたが、今後は違います。50代でフリーランスになり、80歳くらいまでシームレスに働き続けることが人生設計の常識になるでしょう」  いずれにせよ「今と同じ農法や工業技術では、現状の生活水準の維持は不可能」(夫馬氏)なのだ。
夫馬賢治氏

夫馬賢治氏

【戦略・金融コンサルタント・夫馬賢治氏】 サステナビリティ経営・ESG投資コンサルティング会社のニューラルCEO。近著、『データでわかる2030年地球のすがた』(日本経済新聞出版)、『ESG思考』(講談社)
橘 玲氏

橘 玲氏

【作家・投資家・橘 玲氏】 小説から評論、投資術など幅広いジャンルで執筆。『言ってはいけない残酷すぎる真実』(新潮社)、『上級国民/下級国民』(小学館)など著書多数 <取材・文/沼澤典史(清談社)>
清談社 ライター/編集 編集担当作→稲田豊史さん『こわされた夫婦』、生駒明さん『フーゾクの現代史』、諸富祥彦さん、島田友和さん、青木美帆さん『1on1コミュニケーション入門』、しみけんさん『モテる男39の法則』。X(旧Twitter):@numazawa_n
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