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空飛ぶクルマの実用化まであとわずか? 開発者が語る最新事情

今までにない乗り物の開発はプロペラの数を決めるところからスタート

SD01

SD03が作られるまでには試行錯誤が続いた

「クルマ」というと、タイヤが4つあって、丸ハンドルがあって……といったものを想像しがちだが、スカイドライブの空飛ぶクルマは、自動車、ヘリコプター、飛行機、これらいずれとも異なる新しいエアモビリティだ。福澤氏は、初期開発の苦労をこう振り返る。 「飛行機は主翼が2枚あって、自動車はタイヤが4つとハンドルがあって、と形が決まっており、あとは細部をどう調整していくかだと思うのですが、エアモビリティの世界はそうした決まりごとがいっさいありません。プロペラの数をいくつにするかも自由自在で、逆にいえば自由度が高いからこそ、どういった方向性で形作っていくかを考えるのが、まず第一の難関でした」

空飛ぶクルマを開発する企業は世界に300社も

 空飛ぶクルマの開発を手がける企業は世界に200~300社ほどあるが、有人飛行まで成功させている例はごくわずかだ。同社も当初は実機の5分の1サイズで無人飛行試験を重ねていたが、これが1分の1サイズ、まして有人飛行ともなれば、技術上の難しさには雲泥の差があるという。 「機体の状況をコンピューターが把握して、それに対応するモーター出力を決めることは、小型機レベルでは簡単です。しかし人が乗れるような大型機の場合は、コンピューターから出された指令でモーターが動き出す頃には、機体の状況はすでに変化しており、そのままでは墜落してしまう。そうしたタイムラグも見越した設計や制御をしないといけないのが大型機開発の大変なところですね。  それに、一箇所を直したら、その影響で別の箇所が悪くなってしまうような事態も、よくあることです。そうした技術面の難題に加えて、無人のドローンと人が乗る航空機とでは求められる安全性能も1万倍ぐらい違ってきますし、開発のハードルは非常に高いといえます」  開発スタートは’17年9月。そこから3世代の試作機を運用するなかで素材や設計の検討を重ねては、飛行実験を繰り返してきた。そうして’19年末、初めて空飛ぶクルマの有人飛行に成功した瞬間を振り返る福澤氏は、感慨深げだった。 「最初の飛行試験は、離陸から着陸まで、安全にちゃんと最後までいけることを祈って瞬きもせずに見守っていたので、手放しで喜ぶという感じではなかったです。その後も飛行試験を繰り返してきたわけですが、やっぱり、大きいものがちゃんと空中を飛ぶ、飛行時間がだんだん長くなる、といったひとつひとつのステップを経ていくのを見るのは、そのたびに、めちゃくちゃ感動しますよ。毎回、その喜びをみんなで噛みしめています」
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170兆円の市場規模も
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