空飛ぶクルマの実用化まであとわずか? 開発者が語る最新事情
日常に何気なく溶け込んでいる商品やサービスの裏には、知られざる逸話や並々ならぬ努力が隠されていた……。そんな“実はスゴい”エピソードを持つ企業を紹介する連載企画第3回目は、空飛ぶクルマで日本の交通網に革命を起こそうとしている株式会社スカイドライブ(本社=東京都新宿区)を取り上げる。話を聞いたのは株式会社スカイドライブ代表取締役CEO、福澤知浩氏だ。
かつての『ドラえもん』の主題歌に登場する「空を自由に飛びたいな♪」という一節。飛行機やヘリコプターに乗れば空は飛べるが、そこに「自由」はあるだろうか。いつでも気が向いたときに好きな場所から出発し、どこにでも行ける移動手段(モビリティ)でなければ、自由とは呼べないだろう。
今、路上を走っているクルマにはそんな自由はあるが、空は飛べない。ならば空を飛ぶクルマを作ろう。そう考えた若き妄想家たちの夢が、いま現実のものになろうとしている。空飛ぶクルマの実用化に取り組む日本発のスタートアップである株式会社スカイドライブは、’19年12月から有人飛行試験を開始。いよいよ自信を深めた同社は、’20年8月25日に多くのメディアを集めて有人飛行試験を初公開したのだ。
お披露目された三代目試作機「SD-03」は、1人乗りのスポーツカーを彷彿とさせるスタイリッシュなデザイン。駆動方式は、機体の4か所に電動モーターを2個づつ搭載しており、それぞれがローター(羽)を回転させて揚力と推進力を得る仕組みだ。有人飛行試験は愛知県豊田市のテストフィールド(愛知県)で行われ、飛行時間は約4分間だった。同社代表取締役CEO、福澤知浩氏は空飛ぶクルマがもたらす未来について聞いた。
「クルマでの地上移動とちがって、渋滞に巻き込まれることもないし、地形による遠回りもなく、目的地へ向けて一直線に移動できるようになります。また、飛行機やヘリに乗るには、空港の滑走路やヘリポートまでの地上移動手段が必要ですが、我々の空飛ぶクルマは利用者の家の徒歩圏内から飛び立てます。駐車場に収まるコンパクトさとヘリにはない静粛性が特徴ですので、近所のわずかな空きスペースで離発着できるというわけです」
冒頭の「SD-03」は、全長・全幅ともに4メートルで、高さは2メートル。一般の乗用車が全長5メートル×全幅2メートル程度であることを考えると、乗用車2台ぶんの駐車スペースがあれば離着陸できるというわけだ。コンビニやスーパー、ドラッグストアなどをはじめ、日本中に点在する駐車場が、離発着場の有力候補になるだろう。
この空飛ぶクルマは、正式名称を「電動垂直離着陸型無操縦者航空機(eVTOL(electric vertical takeoff and landing):イーブイトール)」という。形を見れば一目瞭然だが、マルチロータ型の一般的な4枚羽のドローンに着想を得た構造だ。
「有人飛行を前提にしているため、安全性に関わる設計はヘリコプターに近いですが、基本的な構造はドローンにいちばん近いです。もちろん飛びやすさや機能性は大前提ですが、我々が強くこだわっているのはデザイン。馴染みのない新奇なデザインというよりは、誰しもが乗ってみたいと思ってもらえるような親近感の湧くものを目指しているので、自動車っぽさはとくに意識しているところです」
たしかに、操縦席のキャノピーからフロントノーズへいたる造形は、どこかF1マシンのつらがまえを思わせる。乗る者のワクワクを刺激するのは、魅力的なクルマの重要条件だろう。
ドローンに着想を得た電動航空機“空飛ぶクルマ”
ドローンに着想を得て……
様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。
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