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グローバルダイニングの時短営業訴訟。飲食業界の本音は

よくぞ言ってくれた!

 数々の飲食店経営者たちが今回の訴訟について、賞賛の声をあげている中、多くの飲食店のプロデュースを手がけ『人気飲食チェーンの本当の凄さがわかる本』(扶桑社)の著者でもある稲田俊輔氏にも話を聞いた。 「まず率直な感想は同業者として『よくぞ言ってくれた』ということがあります。今回の争点となっているお店の規模に関わらず、全店一律の保証というのは規模も体力もないお店を救済するという意味では不公平ながらに一定の意味はあると思いました。  ただグローバルダイニングさんのような大型店の立場になると、本音で言えばたまったもんじゃないという話になるのは当然かと思います。そう言った意味でさすがに政策が大雑把だと私も感じておりました」  さらに稲田氏は悔しかった点として飲食店側の努力を信用してもらえなかったことだと続ける。 「特に時短要請に言えることなのですが、夜の飲食店に対するイメージとして、『大勢の人が集まってお酒に酔ってワイワイ騒ぐ場所』という旧時代的な消費モデルがあるとしか思えない。カウンター席はパーテーションを設置したうえで深夜まで営業可能にするとか、テーブル席は片側しか使わず2人までなら大丈夫みたいな。  お酒が入ってワイワイ騒ぐわけではなく、美味しいものを黙って食べるとか、そういう魅力も飲食店にはある。事実、おひとり様での利用も多い。そこをアピールして最大限の感染症対策をするというやる気マンマンだったわけですよ。そういう方向性でコロナ禍の活路を見出そうとしていた飲食店を飲食店というだけで一斉に否定されたのは悔しかったですね」

飲食業界はスケープゴートにされたのか

 感染拡大を防ぎたいという想いは行政も飲食店も同じ。緊急事態宣言が明け、春の陽気と共に活気が戻り出す街とは裏腹に未だ続く時短要請。withコロナ時代に突入した飲食店の戦いはこれからも続く。  こうした飲食業界の状況を都内のあるパチンコ店オーナーは「とても他人ごとじゃない」と語る。 「昨年、私たちのパチンコ業界は徹底した感染症対策をして、背に腹を変えられぬ思いで店を開けた。しかし、メディアも行政もそんな我々を“ネタ”にするように、立ち入り検査や朝から並ぶお客さんを報道と言ってテレビに映した。  でも、結局、パチンコ屋でクラスターは起きたんですか? 最終的には9割以上が営業自粛を受け入れたんですよ。今の飲食業界の方々はあの時の我々と同じですよ。結局、政策のスケープゴートにされてしまっている印象があります」  昨年の緊急事態宣言禍でパチンコ業界は長く休業を強いられていたが、その後クラスターは発生せず、今回の緊急事態中でも変わらずに営業を行っていることを考えると、多くの飲食店オーナーが言うように「なぜ飲食店だけが」という悲痛な叫びには同情せざるを得ない。<文/谷川一球>
愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。
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