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スコッチウイスキーの誤解。人気の「ジョニーウォーカー」はこうして作られる

スコッチウイスキーの9割はブレンデッドウイスキー

 スコッチとはスコットランドで作られているウイスキーのことですが、必ずしもシングルモルトウイスキーのことを意味しません。それどころか、スコッチとして販売されているウイスキーのうち、約9割がブレンデッドウイスキーなのです。今回は、ブレンデッドウイスキーについて紹介しましょう。  もっとも売れているスコッチかつブレンデッドウイスキーは「ジョニーウォーカー」です。その次が「バランタイン」「シーバスリーガル」と続きます。ちなみに、日本で一番売れているブレンデッドウイスキー「サントリー角瓶」は、「シーバスリーガル」の上、「バランタイン」の下くらいの売上高となっています。
ジョニーウォーカー

スコッチ売れ行きNo1は原価BARでも大人気のジョニーウォーカーです

 ブレンデッドウイスキーとはモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜたものです。モルトとは大麦のことで、グレーンは小麦やライ麦、トウモロコシなどの穀物のことです。  モルトウイスキーは大麦を糖化させて麦汁を作り、発酵させてから単式蒸留器で蒸留します。ほとんどが2回蒸留し、香り高いお酒ができます。存在感があるので、声の大きい(ラウド)スピリッツと呼ばれます。  グレーンウイスキーは穀物を糖化させて発酵させ、連続式蒸留器で蒸留します。軽やかな風味で主張が小さいので、静かな(サイレント)スピリッツとも呼ばれます。  個性のあるモルトウイスキーをグレーンウイスキーでコントロールしながらブレンドし、美味しいウイスキーを作り出すのです。

シングルモルトの劣化版ではない

 シングルモルトウイスキーが好きという人と話していると、ブレンデッドウイスキーは「シングルモルトウイスキーを安物のお酒でかさ増しした低価格製品のこと」と勘違いしている人がいます。たしかに、連続式蒸留器だと効率的に生産できるので価格を抑えることができますが、決してそういうわけではありません。  多くの人に楽しんでもらえるように、味のバランスを追求してできあがったものです。そもそも、昔はシングルモルトを飲む、という人の方が変な目で見られていました。現在でも、販売されているスコッチウイスキーの大半がブレンデッドウイスキーです。  最近は多くのシングルモルトウイスキーが発売されていますが、グレーンウイスキーはあまり市販されていません。例えば、「バランタイン」に使われているグレーンウイスキーは、ハイラム・ウォーカー社が1938年に建造したダンバートン蒸留所で作られています。ダンバートンのシングルグレーンウイスキーは、時々長期熟成ものが高めの価格で出回る程度です。  日本でも買える定番ブレンデッドスコッチウイスキーとしては、前述の「ジョニーウォーカー」「バランタイン」「シーバスリーガル」のほかに、船のラベルが特徴的な「カティサーク」、キリンが販売している「ホワイトホース」、ボトルを斜めに傾けても立つというトリビアが人気の「オールドパー」などがあります。  ちなみに、国際的なウイスキー品評会であるWorld Whiskies Awards 2020のBest Scotch Blended部門で優勝したのは、「デュワーズ ダブルダブル32年」でした。デュワーズのホワイトラベルは1000円台で購入できますが、とても美味しく、コストパフォーマンスのよいウイスキーです。昔、バーで働いていた頃、金がないならこれを飲んでおけ、と渡されたのがデュワーズです。
デュワーズ ダブルダブル32年

「デュワーズ ダブルダブル32年」は5万円を超える価格です

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数十種類のウイスキーをブレンド
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お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる

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