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<純烈物語>「純烈が~、スーパー銭湯に~、帰ってきた~!」待望の温泉有観客ライブが再開<第92回>

ハグも握手もハイタッチもできない撮影会

「そういう意味ではいろんなことが“初体験”になるんですよね。もちろん、大江戸温泉さんでやるのが(昨年2月10日以来)1年2ヵ月ぶりというのはあるんですけど、お客さんのいるところまで一切いけない健康センターライブは純烈結成以来初めてだし、ハグも握手もハイタッチもできない撮影会っていうのも初。それによって、お客さんがどういう気持ちになるのかというのは、やる前の時点でわからない。  今日という一日をトータルで満足して帰っていただくにあたり、それナシで満足してもらえるというのはどんなものなのか。昼の回で、ここが物足りないという顔をしているお客さんがいたら、それを拾って夜の回に生かすとか、そういう姿勢で臨みます」  開演前に後上翔太の話を聞いて、ハッとさせられた。コロナ禍の影響によって新たなステージの形を模索してきた純烈ではあるが、やはり自分たちの根幹に当たる健康センターライブとなると、読めない部分が付随してくるのだと。  それはつまり、ホールでの有観客ライブ以上に観客との距離が近づく中でのやり方と向き合うことを意味する。いみじくも、他の3人もこの日の楽しみであり、かつ肝となるのは1年2ヵ月ぶりの撮影会だと口を揃えていた。 「一人ひとりの顔とリアクションが存在するので、そこが楽しみでありおっかなさであり。『ウワーッ!』と来ちゃうお客さんもいるかもしれないしね。ライブでの純烈との対峙は読めるけど、撮影会になった時のリアクションはやってみないとわからない」(酒井一圭) 「撮影会をやることで着実に一歩進めたことになるので。お客さんも緊張するだろうからお互いに初々しい気持ちでやれたらなと思います」(小田井涼平) 「1年2ヵ月も間が空いたにもかかわらず、待っててくれた人たちがいる。自分がどうよりも、その気持ちを考えちゃうんですよ。ずっと見られなかったおばちゃんたちの顏を、近くで見られるのが今日の楽しみですね」(白川裕二郎)  MAXで450名入る中村座にソーシャルディスタンスを取った上で並べられたイスは150席。入り口向かい側の扉は換気のため開けられ、日中の日差しと生い茂る緑の風景が場内にまで飛び込んでくる。

最前列と2列目の観客はマスクとフェイスシールドを着用

 以前なら昼でも夜でも、あるいは元日の紅白凱旋ライブのような丑三つ時でも時間帯を意識することなく、純烈ワールドによる密閉空間が現出した。室内にいながら青空を横目で見つつステージを眺めるのも、2021年という時代ならではのシチュエーション。最前列と2列目の観客はマスクに加えフェイスシールドの着用が義務づけられ、ステージとの間も通常以上の距離が取られ仕切り線が置かれた。  ホールコンサート同様、歓声や声援といった声出しもできない。いくつものルールを提示されながら、開演前のざわつきからは不満の声も聞かれず。それどころか、何を制限されようとも大江戸温泉物語でまた純烈を見られる喜びの方が遥かに上回っていると言わんばかりの顔が並んでいた。 「1月から有観客ライブは再開しましたけど、そこでも我慢していました。私にとっての純烈ライブ復活は、大江戸温泉にしたかったから。やっぱり私はここが好きだし、ここで見る純烈との距離感が好きなので。だから、私にとっても1年2ヵ月ぶりの生純烈になります」  千葉から来たという三十代の純子さんは、そう言いながら手に持つペンライトをクルクルと回した。撮影会も楽しみにしているとほほ笑んだものの、それはこみあげてくるものを抑えるためのようでもあった。  有観客ライブ再開から続く「純烈コンサート2021 覚えてください!純烈です!!~スーパー銭湯アイドルと呼ばれてます~」でも、幕が上がると声を出してはいけないとわかっていながら思わず「わー……!」と漏らしたり、中には涙ぐんだりする人もいると白川が言っていた。より距離が近いところで4人の歌う姿を目にしたら、エモーショナルになるのも当然だ。 「うん、お客さんはそうだろうね。でも、俺自身は1年2ヵ月ぶりという実感は正直、ないんですよ。さっきもリハーサルの時にテレビの取材が入ってて、もっとドラマティックなコメントをくれよという雰囲気があったんだけど、自分はそういうことに一喜一憂せず、今日の現場を滞りなく成立させることで気持ちがいっぱいなんで。
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「お客さんに仕掛けられて反応していくのが純烈」
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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