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<純烈物語>クライマックスの殺陣にすすり泣く声。水戸黄門と純烈物語のあわせ技に感涙<第90回>

純烈御園座

<第90回>最大の見せ場前の時点ですすり泣きが……。水戸黄門と純烈物語の合わせ技にエモる

 演劇は、舞台上のストーリーと並行し役者のリアルな部分に対する思い入れを通しても楽しめる。純烈のファンであるならば、たとえ目の前に水戸黄門でお馴染みの助さんと格さんがいても、酒井一圭と白川裕二郎の存在感を完全に消して見る方が難しい。  悪代官の息子を演じた小田井涼平、ヒロインの彼氏役・後上翔太についても同じだったはず。だからこそ、それを前提とした中でどんなリアクション、空気になるかが興味深かった。  水戸黄門と言えば、ベタの王道である。日本の国民に根づく最大公約数の形を忠実に、裏切ることなくパーフェクトに描く様式美。何十年と変わらぬ世界が求められるからこそ、演者はそのフォルムを全うすべく稽古を繰り返す必要があった。  時代劇独特のセリフ回しも含め、役者としての個性をどこまで出すかのさじ加減も難しいはず。そのあたり、酒井はどんなスタンスで臨んだのか。

時代劇はスタッフにも挨拶しないと助けてくれない

「時代劇はテレビで『子連れ狼』と『名奉行!大岡越前』を京都の太秦(うずまさ)で撮影した時に出させていただいたことがあったんですけど、舞台は初めてでした。僕の時代劇の感覚で言うと、太秦にはすごい歴史があってスタッフさんにもちゃんと挨拶をしないと助けてくれない。菓子折りを持って『東京から来た酒井一圭です。よろしくお願いします』とやらないと『あんたなんて知らんで』で終わっちゃうんです。  それを経験しているから、セリフの言葉遣いよりも着物を着たりかつらを被ったり、お芝居以前の方が恐ろしいんです。でも今回は、純烈という看板があってむしろ気遣っていただく立場で不思議な感覚なんだけど、やりやすかった。セリフも稽古の段階で演出さんに修正されたり、ベテランの俳優さんがそこはこうだよって教えてくださったりしてくれて。だからスーッと入っていけましたね」  ガオレンジャー役を務めたあとに、酒井はそういう時代劇ならではの現場を見ていた。座組の中にちゃんと溶け込めば、スキルのある人たちが導いてくれる。苦手意識を持つことなく、場合によっては「これは音楽としてとらえた方がスムーズに言えるな」と思ったらそうするよう、臨機応変に対応したという。  セリフだけではない。演技と同時に、時代劇特有の所作も学んだ。たとえば「こちらです」と手をかざす場合、指を開いてパーの形にすると現代っぽくなってしまう。全部ピンと揃えることで、舞台上が江戸時代の顔つきとなる。  そういった部分を一つひとつ押さえて臨んだステージは「みんなの中にあるパッケージ、絵本の中にいる助さんに集中できる環境だった」。酒井は2012年~2015年にビジネスマンを題材としたミュージカル『Way Out』で主演を務めている。そちらはオリジナルのストーリーが知られていない作品に対し、水戸黄門はあらかじめ求められるものに沿った形にするのが任務だから、同じ舞台でもまったく手応えは違った。  演技以外でも心がけていたことがある。それは純烈が変わらず続けてきた姿勢と、年齢と照らし合わせた上での役どころだった。 「純烈って、コツコツやるのが体に染みついているじゃないですか。コロナ前までは毎日のように日本のどこかで歌って握手して、ハグして……を考えられないペースでやってきて、ルーティンを外すとあとあとツケが回ってきてメンタル的にも体力的にも全うできなくなることがわかっているので、この1ヵ月間も一緒でした。純烈らしく里見さんのあとを追いかけて、お供する感じだった」
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