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日立製作所の「米企業1兆円買収」は高すぎる買い物? 老舗企業の選択とは

日立のルマーダは何がすごいのか

日立 ルマーダ

Hitachi Brand Channel「Lumadaコンセプト映像」

 ルマーダとは、“Illuminate(照らす・解明する・輝かせる)“と“Data(データ)“を組み合わせた造語で、デジタル技術を使ったソリューション、サービス、テクノロジーの総称です。  日立はこのルマーダ事業だけで、20年度の見通しで1.1兆円の売上高予想の事業であり、21年度には、売上高で1兆6000億円を目指しています。  IoTサービスを提供する基盤であるルマーダでは、設備の故障を予兆したり、在庫の適正化などをすることで、業務効率化のサービスを展開しています。  ルマーダを導入している代表的な事例が「工場の効率化」です。  データを用いて、生産計画と実際の生産状況をグラフで表すことで、もともと計画から今、何分生産現場が遅れているかを一目でわかるようになっています。つまり、ルマーダは「ものづくり」と「デジタル技術」の融合をすることで、生産現場の可視化を行っているのです。

IT化に躊躇する老舗企業の中で

 また、伝統的な日本企業の中にはIT化の導入に心理的な壁が存在するケースが少なくありません。  この心理的な壁を乗り越えた代表的な事例が、日立と西武鉄道が協同で進めた「車椅子ご利用のお客さまご案内業務支援システム(GSシステム)」です。  当時の西武鉄道はICTの利活用において、何から取り組むべきか、結論が見出せない状態にありました。  そこで、ルマーダは、協創ワークショップを開催し、各メンバーのアイデアや漠然とした想いを一つひとつ明文化し、将来像などを共有しながら、バリアフリー対応の新たなサービスモデルを抽出しました。  その他、ルマーダによるコンサルティング事業もあります。  日立の研究所に在籍しているルマーダのスペシャリストがクライアント企業にコンサルティングを行うのです。  まず、ルマーダのコンサルタントは現在顧客の企業がどんな問題を抱えているのかをデータから分析します。そして企業ごとに最適な解決策を提案するのです。  ルマーダの導入実績は既に1000件を超えており、日立にとって収益の柱の一つになっています。  しかし、ルマーダにも問題があります。現在、ルマーダの海外比率は3割に過ぎないのです。今後、日立はグローバルロジック買収を梃子に、海外比率5割を目指して一気に世界展開していく成長戦略を描いています。
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“イメチェン”真っ最中の日立が気をつけるべきこと
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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