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花王がカネボウとブランド統合。コロナ禍で変わる化粧品事業の生き残り策とは

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買収から15年経った今になって統合

 花王は15年前に「カネボウ化粧品」を買収していますが、統合が進んでいませんでした。買収後、今まで、別々としていた化粧品のブランド事業部をようやく、今年1月に統合しています。  なぜ、今になって統合?と思われるでしょう。統合の背景には、コロナの影響を色濃く受けています。  花王だけでなく、化粧品業界はコロナ以前はインバウンドの追い風を受けて業績が好調でした。しかし、コロナ禍で戦略を見直す必要性に迫られています。  化粧品業界の生き残りのキーワードは、 ・「高価格帯の化粧品の比率を高める」 ・「美容部員に頼らないEC化を進める」 ・「中国マーケットのシェア拡大」 になります。

花王は化粧品事業が足を引っ張る

 花王と言えば、“イケメン5人”のCMで主婦の心を奪った衣料用洗剤の「アタック」や「キュキュット~」でお馴染みの食器用洗剤の「キュキュット」、住居用洗剤の「マジックリン」、ハンドソープの「ビオレ」など洗剤やボディーソープが有名です。  これらのセグメントはコロナ禍でも堅調ですが、化粧品セグメントが足を引っ張る格好が顕著になっているのです。  花王は、2020年12月期の、営業利益が前期比17%減の1755億円となりました。洗剤やハンドソープなどの事業は増益でしたが、前期比減となった要因が化粧品事業です。  化粧品事業は2019年の営業利益414億円から2020年は94%減の26億円にまで落ち込んでいます。営業利益の割合も13.7%から1.1%へと他の事業に比べて存在感が薄れてしまっています。もともと、インバウンド需要が旺盛な時期から、化粧品業界では「花王の一人負け」と言われており、競合他社の資生堂やコーセーとはずいぶんと差を開けられていました。  2つのブランドが別々動いていたことで、美容部員が2倍必要であったり、縦割りで無駄な根回しといった、非効率な事業運営が競争力を弱めていたのです。  それでも、化粧品事業にテコ入れせずに、15年間の時間が経過したのは、日用品に強みを持っているからです。しかし、今回のコロナで化粧品事業は営業利益率を1.1%にまで減らし、稼ぎ頭である、洗剤、ハンドソープの事業を引っ張る形となり、ブランドの統合へと動いたわけです。

化粧品業界は「高価格帯の化粧品」の拡大に商機

 花王のカネボウの買収は、もともと、首位の資生堂を追い抜くために行われた背景があります。2006年に粉飾決算で窮地に陥った、業界2位のカネボウ化粧品の買収に踏み切りましたが、企業文化の違いから融合に時間を要してしまいました。  しかし、カネボウは化粧品の歴史が長く、プライドなども絡み合い、花王が強いスタンスを取れなかったと言われています。特に、買収後には2013年の、カネボウの美白化粧品を使用した皮膚がまだらに白くなる「白斑事件」もあり、花王とカネボウのシナジー効果を生み出すことができていませんでした。  今回の統合により、今後、求められることは、高価格帯の化粧品の拡充です。化粧品事業を「メイク化粧品」と「スキンケア化粧品」に商品を分けた場合は、一般的に利益率は「スキンケア化粧品」が高くなる。高価格帯のスキンケアの売上高を大きくすることで、利益率の高いビジネスができるわけです。花王の「メイク:スキンケア」=5:5であり、資生堂やコーセーは4:6とスキンケア比率が高い傾向にあります。さらに、コロナの影響でメイクをする機会が減りましたが、スキンケア化粧品は底堅い需要となっています。  化粧品業界の王者である資生堂の戦略は、ヘアケア商品「TSUBAKI」を欧州系大手投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズに1600億円で売却しました。これによって、ヘアケア商品や洗顔料は単価1000円前後ですが、高価格帯のスキンケア商品は1万円を超えてきます。今後、高価格帯へのシフトを鮮明にしています。花王も「高価格帯の化粧品」の比率をいかに高められるかが勝負になってきます。
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美容部員に頼らない戦略
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