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デスマッチファイター・葛西純。どんな凶器よりも「ゴキブリ、歯医者のほうが怖い」

苦手なのは昆虫、注射、歯医者、奥様

ドキュメンタリー映画『狂猿』/苦手なものを明かすデスマッチファイター・葛西純

ドキュメンタリー映画『狂猿』/苦手なものを明かすデスマッチファイター・葛西純

 ライバルの存在も自らを鼓舞するガソリンだという。「自分の地位を脅かすようなとんでもない奴がいることで、絶対に負けるものかとテンションもモチベーションも上がる。そしてそいつらを全員倒す。出る杭は打つじゃないけれど、デスマッチ=葛西純であるために。これはデスマッチの話だけではなく、一般的な仕事にも言えること。こいつにだけは負けたくない!と思う奴がいると頑張れるじゃないですか」。  ならば普段も好戦的!?否、プライベートでは幼い娘と高校生の長男を育てる心優しきパパであり、夫。そんな180度違う背中もカメラは追う。ある種のギャップ萌えだ。「注射と歯医者は苦手だし、虫も嫌い。家でチャバネゴキブリでも出ようものならば、すぐに妻を呼びます。妻も怖い存在です。家では常に妻の顔色を窺って生活をしていますし、娘からはよく股間攻撃を受けています」。リングとは一転、家庭では最下位に位置しているようだ。
ドキュメンタリー映画『狂猿』場面写真。プライベートの姿も映し出されている。

ドキュメンタリー映画『狂猿』場面写真/(c) 2021 Jun Kasai Movie Project.

 ところがいざリングに上がると、クレイジー・モンキーと化す。「昆虫を武器にするバラモン兄弟というイカれたレスラーと対戦した際は、気づいたら巨大なゴキブリを鷲掴みにして自分の口の中に入れていました。自宅だったら絶対に妻を呼ぶのに、お客さんが見ている前だと不思議と平気。注射だって試合だったらグサグサ。なぜならばお客さんがいるからです」。さすが『職業、デスマッチファイター』と名乗るだけの変貌ぶりだ。

カリスマ講談師も激賞! 公開前からすでに話題作

ドキュメンタリー映画『狂猿』場面写真

ドキュメンタリー映画『狂猿』場面写真/(c) 2021 Jun Kasai Movie Project.

 デスマッチという非日常を長年生きてきたから、ちょっとやそっとのことでは動じない。今回のドキュメンタリー映画へのオファーもそう。「どうも実感がありません。自分が死ぬときに『実はすべてドッキリでした!』と言われるのではないかと。正直な感想でいうと、自分なんかでいいのか!?とも。妻や息子も今回の映画に対して『へ~』とどこか他人事。20年以上もデスマッチという非日常を生きていると感覚がおかしくなる」。  現実世界では公開前からすでに話題の一作に。プロレス好きで知られる講談師の六代目・神田伯山も自身のラジオ番組で激賞している。葛西は「伯山さんは映画を絶賛してくれたのみならず、自伝の帯にもコメントを寄せてくださいました。映画がヒットしたら、いくらか包んで渡さなければいけませんね」と照れ隠しのデスジョークで「デスマッチは自分が好きで続けてきたもの。しかしまだまだ報われていない部分もある。今回のドキュメンタリー映画を通して、デスマッチというジャンルがプロレスにはあり、葛西純という異質な男がいることを少しでも世の中に知ってもらえたら」と期待を込める。
ドキュメンタリー映画『狂猿』場面写真

ドキュメンタリー映画『狂猿』場面写真/(c) 2021 Jun Kasai Movie Project.

 そしてコロナ禍が明けて、これまで通りの狂ったデスマッチができる日常にも期待する。「コロナウイルスを擬人化したデスマッチファイターと戦うとしたら、有無を言わさず拳銃で撃ち殺す。3カウントもソーシャルディスタンスで」。安心安全にデスマッチという殺し合いができる狂った時代の再来を、狂猿・葛西純は心待ちにしている。
<取材・構成/石井隼人>
1984年生まれ、映画好きフリーライター!インタビュー、取材、レビュー、オフィシャルカメラマン、オフィシャルライター
…なんでもやるのでいつでもどこでもなんでもお仕事の御用命お待ちしております!映画パンフレットも結構書いてます!買ってください!
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タイトル:『狂猿』
公開日:5月28日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー! 以降順次公開
出演:葛西純、佐々木貴、藤田ミノル、本間朋晃、伊藤竜二、ダニー・ハボック、竹田誠志、杉浦 透、佐久田俊行、登坂栄児、松永光弘 ほか
監督:川口潤
撮影:川口 潤、大矢大介、鳥居洋介、村尾照忠
録音:川口 潤 編集:川口 潤、築地亮佑((COLORS)  MA :三留雄也
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写真撮影:岸田哲平、中河原理英
制作:アイランドフィルムズ 企画:佐藤優子
製作:葛西純映画製作プロジェクト(スペースシャワーネットワーク+ポニーキャニオン プロレスリング FREEDOMS
配給:SPACE SHOWER FILMS
【 1.78 1 /カラー/ステレオ 107 分/ 2021 年/日本/ PG12 】

(c) 2021 Jun Kasai Movie Project.

HP:Kyoenmovie.com

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