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「入管法改正案」廃案でも収容所は悲惨。「コロナになって10kgやせた」難民の涙

被収容者たちは今も苦しみ続けている

入管収容施設でのひどい待遇は、今もまったく変わることがない(織田朝日『ある日の入管』より)

入管収容施設でのひどい待遇は、今もまったく変わることがない(織田朝日『ある日の入管』より)

 確かに問題は山積みだ。3月6日、名古屋入管の収容施設で亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマさんの死の真相についても、まだ入管は隠している。彼女の親族が来日して「ビデオを開示してほしい」と要求しているが、入管庁側は渋り続けている。  この件が解決しない限りは、たとえ廃案になろうとも何も終わりにはできない。彼女だけではなく、これまで何人もの命が収容中に失われている。  東京入管に収容されている人たちは、今回の廃案に喜んではいるが、相変わらずいつ解放されるかわからない状態のままで苦しんでいる。さらに、収容施設内で新型コロナウイルスのクラスター被害に遭った人たち(筆者記事「東京入管でクラスター発生、男性被収容者の約4割が感染。施設内のコロナ対策がずさんすぎる?」参照)はなおさら、頭痛や味覚がないなどの後遺症に苦しみ続けている。

一向に改善されない長期収容・収容施設での待遇

「人間として扱ってほしい」という被収容者たちの訴えを、入管側は一向に聞こうとしな

「人間として扱ってほしい」という被収容者たちの訴えを、入管側はいっこうに聞こうとはしない(織田朝日『ある日の入管』より)

 1年2か月にわたって東京入管に収容されているスリランカ難民のジャヤンタさんはこう語る。 「悪い法律がなくなったのは嬉しいです。しかし、この長期収容はどうなっていくのでしょうか? 私はコロナになってから10kgやせて、栄養が足りていません。外部の病院に連れて行かれたのですが、医者に職員ばかりが説明をして、いつも私にしゃべらせてくれません。  私がちょっとでも『(入管の)弁当の栄養が足りない』などと声をあげると、職員は『そんなことはない』と話をさえぎるのです。だから私は、あらかじめ用意していたノートを医者に見せました。 『なまやさい きゅうりたべたい なっとたべたい ハナナたべたい きむちたべたい さかなたべたい スープのみたい ケーキたべたい たべたいのはたくさんあるのに入管でおなじものばかり 入管のべんとうは 今の私に栄養がたりない 職員に病気をいいにくい もしかして外にでたいと思われるからです(仮病だと思われる)。本当はつらいです』(原文ママ)  それを見た医者は職員に『栄養のあるものを食べさせられないのですか?』と聞いてくれました。職員は『できない。油ものは抜くことはできるが……』と答えました。  スリランカにいる私の母は、ウィシュマさんのお母さんの電話番号を人から聞いて、話をしました。ウィシュマさんのお母さんはすごく泣いていました。『あなたの息子さんは?』と聞いてきたので、母は『同じところ(日本の収容施設)です』と答えました。ウィシュマさんのお母さんは『息子さんは元気ですか?』と尋ねました……」  ジャヤンタさんは、ここまで話すと急に黙り込んだ。そしてしばらく天井を見つめ、目には涙をためていた。  廃案になりはしたが、入管による長期収容も収容施設での処遇も、一向に改善が見られない。彼らはいつになったら苦しみから解放されるのか。なぜここまで苦しめる必要があるのか。他者を大事にできない社会を放置したままでは、いずれ自分たちもないがしろにされる日が来るかもしれない。 文・写真/織田朝日
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

非人道的な入管の実態をマンガでリポート!

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