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エントリー費導入やDVDで収益化を達成。“MCバトルのマネタイズ”のオリジネイター・MC漢のスゴさとは<ダメリーマン成り上がり道#44>

エントリー費は「有名になるための片道チケット」

漢 a.k.a. GAMI氏

漢 a.k.a. GAMI氏

正社員:そのころのUMBって「エントリーした時点で大会の映像における肖像権を破棄します」みたいな署名をMCに求めてましたよね。 :「映像になることが前提の大会だよ」って事前の告知だよね。DVDになったあとから「ギャランティが発生しないのか」と言われてもおかしな話になっちゃうから。 正社員:メジャーアーティストもエントリーしてましたけど、エントリー費の2000円を支払って、おまけに肖像権も放棄するって、とんでもないシステムだと思います(笑) :それも「言い方次第」だから。MCたちには「バイトでも、先輩のパシリでも、親の手伝いでも何でもいいから、2000円だけ稼いで持ってくればOK。勝てる自信があるなら、いま払う。2000円は一発当てて有名になるための片道チケットだからね」って伝えてるから。あと当時のMCバトルは本当にマイナーな存在だったし、大会運営で赤字は出せなかった。 正社員:それは今でも同じですね。 :地方では客が来ない可能性も考えられたから、エントリー費もDVDの収益も必要だったね。 正社員:DVDの収益をイベントに回すって運営をしたのは本当に発明ですよね。実際、あのころは本当に冬の時代だし。結局、俺はそれに早い段階で乗っかっただけだし、後発組も同じですよね。

ヒップホップをビジネスにしていく過程とは

――ラッパー自身が「レーベルの有限会社化」「DVD制作を前提でイベントの収益化」といったアイデアを発案できたことがスゴいなと思います。 :レーベルの作り方とか、音楽の流通に関わるカネの流れは、もともとこの会社を一緒にやる予定だった佐藤さん(故・佐藤将氏。P-VINEの元A&R・ディレクター)から教わった。最初は俺も「全国流通できるレーベルでCD出せば1000枚くらい無名でも売れるでしょ」って思ってたんだけど、佐藤さんは「そんなことは全然なくて、数十枚や数百枚の人なんてザラにいます」って。「そんな世界なの?」って思ったよ。 ――シビアな世界ですね……。 :で、「お金の流れはどうなっているんですか」って聞いたら、「制作サイドの利益の半分は流通会社に持っていかれる」と。しかも当時はエンジニアとスタジオ費で最低でも一時間2万円かかったし、ミックスも一曲10万は必要だった。そういう状況を知ったうえで音楽ビジネスもお金の工面の仕方も学んだし、会社化してレーベルを運営するビジョンも固まっていった。その点は社長よりぜんぜん詳しくなってたから、相手が目上でも全然関係なくこっちのやり方をシビアに伝えて運営してたね。
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「ケンカができないヤツでも戦えるルール」誕生の背景
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戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
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