エンタメ

<純烈物語>松岡英明、岡村靖幸……小田井涼平はひとクセあるソロアーティストに影響を受けた<第101回>

「マネしすぎて歌いグセが抜けていない」

 実は純烈におけるパフォーマンスでも、ちょっぴり岡村の影響を受けているらしく、いわく「マネしすぎて歌いグセが抜けていない」とのこと。  とは言うもののグループとしての活動を始めた当時は、踊りながら歌うスタイルがそれまで聴いていたジャンルとはかけ離れたものだったため、自分のバックボーンの中から何を元にしたらいいかがわからなかった。  そこで小田井は同じ音楽であってもバッサリと切り離し、ゼロから新しくインプットし直すことを心がける。ソロでは『そして、神戸』を歌う機会が多かったので、前川清のエッセンスを採り入れた。 「オリジナル曲は歌の先生がいて、歌い方の指導があって、こういうのをやりたいというのを加えながら修正して曲ができあがるけど、カヴァーってメジャーな曲であればあるほどある程度そのテイストを残した方が聴きやすいんです。  いくらなんでもマネしたって思われるのは嫌なので、自分なりに解釈し直した上で歌ってみようといろいろ練習したんですけど、一回イメージが染みついたものは何をやってもハマらないのが音楽の怖さで。  それを置き替えられるほどのアーティストとしての力量があれば違ってくるんでしょうけど、僕の場合は前川さんテイストでやった方がしっくりきた。僕らの歌う『そして、神戸』は、クール・ファイブの音源をそのまま使っていて、バックコーラスもクール・ファイブの皆さんの声がうっすら入ってて、演奏も当時のもの。そうすると前川さんに合わせた演奏がついているから、ものすごい迫力なんです」

内山田洋とクール・ファイブは「もはやロック」

 小田井に言わせると、当時の内山田洋とクール・ファイブは「もはやロック」となる。ギターがガンガンに鳴り響き、コーラスは通常のムード歌謡よりハッキリと聴こえる。前川のボーカルがパワフルだから、それに合わせなければ負けてしまうのだ。  ムード歌謡らしいボーカルでやったらオケに太刀打ちできないし、何よりしっくりしなくなる。ほかのメンバーのあと、小田井が『そして、神戸』に入るや声量がドーンと来るから音響スタッフが驚き、ボリュームを落とそうとする。 「ここ、下げんといて!」と合図を送る小田井。ムード歌謡曲をロックの意識で歌うという点で、もしかすると若き日に耳へ刻んでいたものが生かされているのかしれない。 「そこは、好きにやっていいよって言われたら意識して盛り込みたいとも思いますけど、どうだろう……やっぱり別モノなんでしょうね。でも、この仕事をやってきたから金子さんにも会えたしね」  金子さんとは、米米CLUBのホーンセクション・BIG HORNS BEEでサックスを担当していたフラッシュ金子のこと。純烈も出演するNHK『うたコン』で2017年より指揮者を務めている。  以前、LiLiCo出演舞台の音楽を金子が担当し、その自宅兼スタジオでレコーディングしたのを聞かされ、すこぶる羨ましく思っていた。それが自分も出逢えるとは……米米時代の楽曲作りに関する話がとても興味深く、ワクワクしながらCDを聴きまくった頃の自分が蘇ってきた。  ソノシートから始まった小田井涼平の音楽体験を振り返ると、常に重要な位置へあり続けたわけでなくとも、そのつど人生になんらかの色づけをしてきた存在なのがわかる。  今後、ライブパフォーマンスの中で引っかかりを覚える瞬間があったら、ここに登場したアーティストを思い起こせば一本の線でつながるかもしれないので、それを新たな楽しむポイントとしていただきたい。 撮影/ヤナガワゴ―ッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ