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「母国で仲間が殺されている」ナイジェリア・ビアフラ出身女性の悲痛な願い

ビアフラ民族組織の指導者をナイジェリア政府が拘束

ナイジェリア大使館前には、ビアフラ出身者を含めて100人以上が集まった

ナイジェリア大使館前には、ビアフラ出身者を含めて100人以上が集まった

 今年6月、平和的な住民投票によるビアフラ分離独立を目指す民族組織「IPOB」(ビアフラ先住民族)指導者のンナムディ・カヌ氏が、ナイジェリア政府に拘束された。カヌ氏自身はイギリス国籍だが、ケニアに滞在中、ナイジェリア政府がケニア政府にカヌ氏の身柄引き渡しを要求したため、6月18日にケニアの秘密警察に空港で拘束され、6月27日ナイジェリアに強制送還された。  その処遇は決して良いものではなく、健康状態も良くないという。「命すら危うい可能性もある」と参加者たちは危惧している。今回の行動は、カヌ氏の解放を求めるための抗議行動でもあった。そんな経緯から、この日はナイジェリア大使館だけでなくイギリス大使館、ケニア大使館にも足を運ぶ予定になっていた。  ナイジェリア大使館前では職員が外に出てきて、参加者の前で要求が書かれた申し入れ書を受け取り、「上の者に必ず伝える」と全員に伝わるように答えた。誠実な態度だった。参加者の話によると、「あの職員もビアフラ出身」なのだそうだ。

イギリス大使館、ケニア大使館にも申し入れ

イギリス大使館前まで行くことを許されたのは代表5名だけだった。残りの人々は道路の反対側に待機させられた

イギリス大使館前まで行くことを許されたのは代表5名だけだった。残りの人々は道路の反対側に待機させられた

 次に、千代田区にあるイギリス大使館まで電車で移動した。イギリス大使館はなぜか警察の警備が非常に厳しく、100人以上の参加者を大使館とは反対側の歩道に立たせ、代表者5名までしか大使館前まで行くのは許さないと告げられた。  ナイジェリア大使館とは違ってイギリス大使館の職員は出てくる意思がなく、「警備員が代わりに申し入れ書を受け取る」と言ってきた。そのことで参加者たちは怒り出した。警察官と言い合いになり、反対側の歩道で待機していた人たちもガードレールを乗り越えて道路を渡り、大使館に向かってこようとした。  警察官の数も増えていき、緊迫した状態がしばらく続いた。参加者たちは「イギリス国籍であるカヌ氏を助けるために協力してほしい」と、抗議というよりも「嘆願」に来ていただけだっだ。代表たちは「イギリス大使館の職員が直接、手紙を受け取ってくれるまでは帰らない」と、強い姿勢を見せた。  そもそもナイジェリアの民族紛争には、イギリスの植民地支配が大きく影響している。それぞれ独自の文化を持っていた民族グループが、1870年代以降のイギリスによる植民地化で1つにまとめられた。そして1950~1960年代にアフリカ諸国が次々と独立した時、そこに住む人々の民族的・文化的な背景は考慮されることなく、イギリスの都合で国境が引かれてしまったのだ。  参加者に対してイライラしていた警察たちも、だんだんと参加者たちの気持ちを汲み取るようになった。「大使館の人さえ出てくれば済む話なのに」と同調してくれるようになり、緊張していた場が少しずつ緩んできた。
粘った末、代表がイギリス大使館職員に申し入れ書を手渡すことができた

粘った末、代表がイギリス大使館職員に申し入れ書を手渡すことができた

 最終的には職員が直接、参加者に申し入れ書を受け取ることを了承し、この場は無事に終わることができた。参加者たちは警察に何度も「ありがとうございました」とお礼を言い、警察側も「よかったね、よかったね」と優しい言葉を彼らにかけた。  最終地点はケニア大使館。住宅街にあるため、近隣に迷惑をかけないように代表の数人のみ行くことになり、ここでいったん解散となった。炎天下の中を移動して何時間も立ち続け、誰もがかなりの消耗をしたことだろう。ゆっくり休んでもらいたい。  日本からするとナイジェリアの紛争は、海をはるか越えた遠いできごとのように感じるかもしれない。それでもエリザベスさんは、「たくさんの人たちが殺されている。多くの日本人にも、この問題を知られてほしい」と切実に語る。  エリザベスさんやビアフラの人々が願う独立や平和は、いつかなうのだろうか。日本人の関心が高まることを願ってやまない。 文・写真/織田朝日
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

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