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スポーツクライミング女子複合・銀、野中生萌「結果を出すって、簡単じゃない」

じわじわ登るより瞬発的な動きが得意

――「スピード」は日本でナンバーワン。「トモアスキップ」も女子ではいち早く取り入れました。この技は本人から教わったのですか? 野中:見てできましたね。初めてやったのが’18年のアジア選手権。監督に言われて、大会3日前とかに試したらできたんです。実際にタイムも上がったので、練習を積まなくても速くなるならと始めました。でも、今は他の選手も取り入れてきていますし、焦るものがあります。 ――それでも、パワー系では女子のなかで群を抜いています。もともとの素質なのか、トレーニングによるものなのか。 野中:素質…ですかね。じわじわ登るというより瞬発的な動きが得意だったので。でも、男子はもっとすごい。だから、あんな瞬発的な動きができたら、もっと楽しいだろうなと思います。

成績だけで判断される風潮が嫌だった

ーー18年3月に取材をさせてもらったときは、「一生かけて『強いクライマー』になりたいから、東京オリンピックも通過点として出場したい」とさらりと話していましたが、今の心境は? 野中:変わりました!そもそもクライミングはオリンピック競技じゃなかったので、あのときはまだピンときてなかったんです。「オリンピック?出られるならやるけど」みたいな。でももう、そんなこと思ってないです!ほんと私…ナメてましたね(笑)。今では、オリンピックの影響をつくづく実感しています。クライミングを知る人もすごく増えたし、実際、オリンピックを目指す選手も増えて、日本も急激に強くなった。もともと強かったけれど、自国でオリンピックをやるからって、選手がすごく強くなっていったのを体感しています。おかげで注目されて、いろんなものから刺激を受けて、戦いも厳しくなっていって。私も本気度がぐんぐん上がりました。本当にオリンピックって特別なものなんだなって今は思います。 ――あのとき、「世界には大会やオリンピックに出場しない外岩専門のすごいクライマーがいるし、スポーツクライミングだけでなく総合的に強いクライマーを目指したい」とも言ってましたね。 野中:一時期、私は成績だけで判断される風潮が嫌だったんです。どれだけ内容が悪くても1位なら「すごい」って言われるし、最高の登りをしても1位じゃなかったら評価されない。いやそうじゃないでしょう、って。今もそういう考えは持ってはいるんですけど、実際のところ“結果”を求めていくのって、ものすごく難しく、目を背ける口実にしている部分もあったのかなと。「強いクライマー」になりたい思いは変わらないけど、じゃあ「強いクライマーって何?」って自問したら、まずは大会で成績を残すことだった。証拠を残す。すると1位、イコール強い、と簡単に示すことができる。 ――それで、結果をより求めていくようになったんですね。 野中:結果を出すって、簡単じゃない。だから野口啓代さんのように、ずっとトップで居続けるって本当にすごいなって思うので、今はそこにチャレンジしているところです。
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