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西成の元日雇い労働者たちが作るクラフトビール「暴動エール」の味とは

なぜビールだったのか?

西成ライオットエール

シクロの代表を務める山﨑昌宣氏

 最初は密造酒をヒントに日本酒の醸造を考えたという山﨑社長。クラフトビール造りに至ったのにはこのような考えがあったという。 「日本酒造りに大切な米どころやきれいな水が大阪になく、第一次産業が近くない街でも十分美味しいものを造ることができるのがビールなんです。  日本酒や獨酒を醸造してリアルな西成感を出すのではなく、西成カルチャーの延長線上として半分リアルで半分ファンタジーな『ネオ西成』という形のビールを考えました。  西成と暴動の話は切っても切れないイメージなので商品名を『ライオットエール』として、当時の暴動の話や西成にまつわる人の話を聞いて、商品のパッケージのイラストや架空のストーリーを考えました」  ライオットエールを販売する「DerailleurBrewWorks(ディレイラブリューワークス)」では現在60種類以上のクラフトビールがあり、それぞれにまつわる架空のストーリーはすべて山﨑社長が考えているという。  こうして、誕生した『ライオットエール』は2018年に発売するとまたたく間に人気を呼んだ。

障害者の雇用も創出

 昨年まで月6000本ほどの生産だったが、今年3月には第2醸造所を整備し生産量は5~6倍に増やしたと山﨑社長は語る。今後はビールの容器を瓶から缶に切り替え、障害者の雇用創出を積極的に取り組んでいくという。 「クラフトビールといえば瓶ビールのイメージがあると思いますが、アメリカやオーストラリアでは瓶から缶への移行が進んでいるんです。日本で缶を導入するとなると生産する機械が高いのですがラベルが全面的に貼れる分、瓶よりも広告として有効的だと考えます。  他には、現在空いている旧工場を今後は清涼飲料水やクラフトジンの蒸溜所として稼働させる予定です。雇用する障害者の方達は元々、ドヤに住んでいることが多かったのですが、現在は新工場の横に寄宿舎とマンションを作りました。  ドヤだとエレベーターがなかったり介護ベッドを置くスペースがないこともあるので、転居費用の補填をして部屋を借りた作業員もいます。ただし、今はコロナ渦で9割以上が在宅勤務に……。  現場で携わることが活力になるので自宅で作業すると面白くない、孤独感を感じるという作業員もいます。この状況がずっと続くのだとしたら、今後の課題でもありますね」
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西成の魅力とは
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東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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