ヤクザ映画の東映、再び。『孤狼の血』続編に出演を志願する俳優は後を絶たず
今、日本映画界で俳優からのラブコールがもっとも多いのは、白石和彌監督ではないだろうか。’18年に公開された『孤狼の血』は、昭和のにおいを漂わせたヤクザ映画として熱狂的なファンを生み出し、俳優からも続編『孤狼の血 LEVEL2』に立候補する者が多かったという。
「ありがたいことに、前作の公開後、会う俳優さんがみんな『孤狼の血に出たい』って言ってくれたので、キャスティングは前作よりスムーズでした。でも、いざ刑事役でオファーしてみると『次回は“ヤクザ役”で、ぜひ』とやんわり断ってきた人も何人かいましたね(笑)」
白石監督は、助監督時代にヤクザ映画の宝庫でもあるVシネマを多数手がけてきたため、正面から暴力と向き合うヤクザ映画の醍醐味を熟知している。しかし平成初期に施行された暴対法を経た今の時代、昔ながらのヤクザ映画を撮るのは難しさもあるようだ。
「ヤクザを描くにしても、『ヤクザと家族』や『素晴らしき世界』のように、今年は奇しくもヤクザの人権に焦点を当てた映画が続きました。すごくいい映画だとは思うんですが、現実問題、最近でも緊急事態宣言下にヤクザの抗争があったりするわけです。悪い奴だっている。
前作の大きな反響からも、暴力や狂気が渦巻く、一見古く見えるヤクザ映画に、現代的な要素を少し入れて世界観をちゃんと示せば、まだまだ闘えるジャンルだと手応えは感じてます。描き方ひとつですよ」
柚月裕子のベストセラー小説を原作にした前作と違い、本作は完全オリジナルストーリー。伝説のマル暴刑事・大上(役所広司)の遺志を継いだ日岡(松坂桃李)は裏社会を仕切っていたが、最凶のヤクザ・上林(鈴木亮平)の出所を機に秩序が破られていく。
日岡を演じる松坂について、監督は「役柄も本人も成長したのを、一番間近で見ることができた」と話す。
「3年の間に人として、でかくなって帰ってきましたね。前作は役所広司さんと共演してる喜びが先行していたと思うのですが、今回はどっしりと風格があり、見事に座長を務めてくれた。僕自身、こうやって役者は大きくなっていくんだ、と作品を通して知れたのは嬉しかったですよ」
本作は主演級の役者がずらりと出演する。俳優たちの怪演、狂演に「何度も驚かされた」と監督は明かす。
「特に中村梅雀さんと早乙女太一くんです。梅雀さんとは一度仕事をしたいな、と思っていたんですけど、期待以上でした。太一くんはヤクザ役のなかでガチ感のレベルが違った。大衆演劇出身だから、幼いときからいろんな世界を見てきたのかも。目つきが本物なんですよ。あの才能には惚れてしまいましたね」
「ヤクザを演じたい」。『孤狼の血』続編には俳優からオファー殺到
白石監督が「惚れた」俳優
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