恋愛・結婚

コンビニ店員が客と恋仲に。「ちゃんと責任取ってよね」と迫られて…

「小林さんは私の元カレに似ている」

 翌日の夕方、近所の書店の駐車場で待ち合わせた。すると、Y子はそこにクルマで現れる。 「クルマで来たんですか」 「さ、乗ってください」  僕は歩いて適当に近くの飲食店に入るつもりだったのだが、ともかく彼女の運転するクルマの助手席に乗り込んだ。彼女が入ったのは一軒のファミレスだった。 「小林さんは私の元カレに似てるんですよ」  彼女はパスタをフォークでクルクルと回しながら話しはじめた。 「あ、でも、誤解しないでくださいね。小林さんに興味をもったのは元カレに似てたということがきっかけなんですけど、今は小林さんのほうがずっと好きですよ。私、こんなに人を好きになったのはじめてなんです」 「そうですか……」  僕はそうまんざらでもなかった。が、すぐに付き合おうなんて言えなかった。彼女の思いがあまりに強すぎて少し引いている部分があったのである。 「今日は小林さんの話を聞かせてください」 「僕の話?」 「いつも私ばかり話してるじゃないですか。だから、たまには小林さんの話を聞かせてください」 「僕は別に話すことなんて……」  結局、このときも話をしたのはY子ばかりだった。食事を終えて店を出る。そしてまた彼女のクルマに乗り込んだ。

ラブホに連れていかれる

「少しドライブしてもいいですか」 「いいですよ」  僕がそう答えると、彼女は街の中心部から離れていくほうへとクルマを走らせる。車窓の景色からは徐々に光が消えていき、やがて真っ暗な夜の中を外灯の光がヒュンヒュンと一定のリズムで通り過ぎていくだけになる。 「どこ向かってます?」 「二人きりになれる場所」 「今も二人きりですけど」 「いや、そうじゃなくて……。もっと二人きりになれる場所」 「具体的にどこですか」 「ラブホ」  僕はドキリとして沈黙する。 「行っていいですか」  僕はなにも答えなかった。無言で承諾したつもりだった。彼女のほうもそれを汲み取ってか、しばらくクルマを走らせてから誘蛾灯のように看板のネオンを煌々と光らせるラブホの門を潜った。  そしてそのベッドの上でのことである。彼女の前腕に無数の切り傷の跡があるのに気付いた。そのうちのいくつかにはまだ瘡蓋が付いている。 「なんですか、これ」 「えへッ、ちょっと切っちゃった」 「ふーん……」  そのときの僕はそれをあまり気にしなかった。まだあまりにも若すぎて、とにかく性欲を満たすことしか頭になかったのである。  それから僕はY子と付き合うかどうかを保留にしたままコンビニ以外でもたまに会うようになり、やがて彼女は僕のアパートにまで来るようになった。
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嫉妬した彼女がとった驚きの行動
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