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科学的裏付けも国民の信頼もなかった安倍・菅政権のコロナ対策<立憲民主党衆議院議員 逢坂誠二>

台湾、NZ式のゼロコロナ戦略を

―― 今は名称が変わっているかもしれませんが、立憲民主党は今年2月に「ゼロコロナ」戦略を打ち出しました。これは台湾やニュージーランドがとっているエリミネーション戦略の日本版だと思いますが、「ゼロコロナ」という言葉に現実性がないと抵抗のある人もいるようです。この点、反論はありますか? 逢坂 よく誤解されるのですが、「ゼロコロナ」は①医療機関への支援を万全にし、医療崩壊を最優先で食い止める②感染者の早期把握と隔離を進め感染の封じ込めを徹底する③倒産や廃業を防ぐ経済的支援と生活支援で経済と暮らしを守る、の3本柱で「市中感染を徹底的に封じ込める」「感染経路が追跡可能な範囲まで感染を抑制する」ことです。「ウイルスをゼロにする」「根絶する」という意味ではありません。   今のようにリバウンド、人流抑制を何度も繰り返すと経済や社会へのダメージがどんどん大きくなります。例えば東京ならば、1日の感染者数が100人あるいは50人を切るのが理想的だと専門家は言っています。このレベルであれば都内の保健所のマンパワーで感染経路が追跡できるからです。その程度まで感染を抑え込んだ上で経済活動を再開させようという考え方です。今の政府は、「ゼロコロナ」状態を作り出すことに失敗し、今の感染拡大に繋がっています。経口治療薬の完成や多くの方が免疫を獲得するまでは、ゼロコロナ状態が目標であることに変わりはありません。

公務員バッシングと削減のツケを今払っている

―― 今発令されている緊急事態宣言は有名無実化しており機能していない。補償をきちんと行うことで改めて本当の緊急事態宣言に巻き直すということでしょうか。 逢坂 そういうことです。現実問題としてお金の裏付けは必要です。地元の皆さんの声を聞いていても、「お金の面倒をみてくれたら我慢する」という意見が多い。いまお店を開けている人たちも何も好んでやっているわけではない。そうしないと食べていけないからです。店が潰れてしまうからです。  「お金は補償しない、でも、店は閉めろ」というのはむちゃくちゃでしょう。国民の我慢と気合いに頼るのはもはや政治とは言えない。政治の責任放棄です。  政治の役割はいざというときの備えをするということです。民間事業者の皆さんも色々な社会貢献をしておりますが、貢献は利潤の範囲になります。一方、足元の経済的合理性はないけれども、万が一、国民が危機に瀕したときのために、中長期的利益を考えて備えておくのが政治です。  今回一つ明らかになったのは、公務員をめぐる体制の問題です。中曽根康弘首相以降、特に小泉純一郎首相以降、行政改革の名のもとに「公務員の数が多すぎる」「公務員は無駄だ」「民間に比べて生産性が低くて非効率だ」という声が高まりました。  ところが、国家的な危機に自己の利益を優先せずに責任を負ってきちんと対応できるのは、公務員しかいないんです。公務員は緊急事態においては自己利益ではなく国民の命を守ることを優先して行動することが求められる。だから、一定程度の身分保障がされているのです。逆に景気が良くてもそんなに給料は上がらない。公務員バッシングの正体は日本国民全体が貧しくなったために、結果として身分が安定している公務員が羨ましく見えたことが原因のひとつだと思います。豊かな国ではここまで公務員が目の敵にされることはないでしょう。  国民を危機から救う実働部隊は公務員です。コロナ禍で明らかになった公務員削減のツケの典型例が保健所です。保健所を減らしすぎた結果、このような危機に対応できなかった。経産省もそうです。持続化給付金を支払いたい、家賃支援のお金を払いたいといっても、経産省にそれをやるマンパワーがない。だから外注する。でも発注を受けた民間事業者には法律や公務の作法がわからないから、国民に十分に説明ができない。そこでいつまでも支援が受けられない「不備ループ」のようなものが生まれてトラブルが生まれる。そこでさらに事務局を拡大して事務費が増えるということになっている。結果として公務員を雇うよりもサービスの質は低下し、効率は落ち、お金もかかっているのではないでしょうか。  政治の究極の役割は国民の命と暮らしを守ることです。はっきり言いましょう。安倍政権、菅政権が対策をきちんと行っていれば亡くならなくてもいい人がたくさんいた。政治の無策によって死んだ人が大勢いる。これは2020~21年に政治が招いた悲劇です。だから、そこに対する政治の反省がない限り、私はこの状況を乗り越えられないと思います。今国民のみなさんが苦しんでいることに対して、与野党関係なく全ての政治家が本当に申し訳ないという気持ちを持たなければいけません。  菅首相の無責任な権力放り投げのせいで、大きな政治空白が生まれている。退くにしてもタイミングとやり方があったでしょう。総理選びに直結する総裁選は重要ですが、国民の命を守るため、それに時間をかけている場合じゃないんです。粛々とさらりと決めていただいて、少しでも政治の空白を埋めなければいけません。今、総裁選に躍起になっている自民党の政治家はみな、国民がおかれている窮状を真剣に受け止めているとは思えません。やはり彼らに国は任せられません。 (9月6日 聞き手・構成 杉本健太郎) <初出:月刊日本10月号
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2021年10月号

【巻頭インタビュー】元自由民主党幹事長 石破 茂
【特集1】自民党は歴史的使命を終えた!
【特集2】なぜ今ロックダウンなのか
【特集3】アフガン退避作戦失敗、茂木外相は即刻辞任せよ


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