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科学的裏付けも国民の信頼もなかった安倍・菅政権のコロナ対策<立憲民主党衆議院議員 逢坂誠二>

―[月刊日本]―

科学的裏付けとメッセージに欠けた安倍・菅政権

コロナウイルス

写真はイメージです

―― 安倍政権、菅政権のコロナ対策に対する評価を教えてください。 逢坂誠二氏(以下、逢坂) 問題を過小評価し、対応が後手にまわり続けています。感染症対応の基本は2つ。感染者を見つけ、隔離することです。そのために徹底した検査をしなければいけません。それにもかかわらず政府は検査に対し抑制的です。また国家的な危機に際してトップリーダーに求められるのは国民に対する明確なメッセージです。これが安倍さんと菅さんにはない。特に菅政権になってから安倍政権以上に説明責任を回避する場面が増えました。例えば、官邸での記者会見では同じ記者からの質問を1回しか受けない。さらに会見では答えず、書面回答までやっている。こんなことでは総理の血の通った声が国民に届きません。危機に直面した時のトップリーダーとしてのあり方が大きく間違っています。 ―― PCR検査は去年の段階から増やすべきだという声が専門家や政治家から上がっていましたが、なぜ増えないのでしょう? 逢坂 そこが全く理解できません。去年の3月19日からコロナ対策には、政府も与党も野党もないということで、「政府・与野党連絡協議会」を作りました。官邸から官房副長官、与党各党の政策責任者、野党は私が筆頭で各党の議員が参加し何度も話し合いました。この中で与党からも検査を増やせという声が出ましたがなぜか増えない。当初は病床が逼迫するからあえて抑制しているのかなと思ったのですが、どうもそうではないらしい。どこで止まっているのか闇の中なのです。それが今日この時点においても続いている。  私が驚いたのは、岸田文雄さんが自民党総裁選に向けて発表したコロナ対策の中に「検査の無料化・拡充」が入っていたことです。与党の政調会長を去年まで務められた方が、今ごろ「検査の拡充」を言わなければいけない状況は、政府が機能していない証拠です。  我々はPCR検査だけでなくゲノム解析を国の総力を挙げてやるべきだと主張してきましたが、これも実現していません。国立感染研究所など公的機関の縄張り争いが背景にあるのかもしれないという声は聞こえてきますが、本当のところはわかりません。 ―― 「ゲノム解析」はあまり聞き馴染みがないのですが、どういう検査ですか。 逢坂 新型コロナウイルス感染者から誰かにうつったときにウイルス遺伝子の一部が変化します。たとえば元が「A」だったら次は「A’」になっているということです。これで誰から誰にうつったのか経路を追跡することができるのです。  例えばニュージーランドでは検体を採取してから数時間~10時間程度で結果が出ます。だから、ニュージーランドは1人の感染者でもロックダウンできるのです。科学的な裏付けによって感染経路がわかればロックダウンを解除できる、この条件が明確にされているからです。 ―― 聞き取り調査に頼ると、必然的にマスクを外したところ、つまり家の中か飲食店という結論になってしまうわけですね。 逢坂 加えて、「あそこに行ったと言いたくないから隠しちゃおう」というケースもあるわけです。繁華街に行ったと知られたら会社からどう思われるかなとか、家族にばれたくないなということも現実問題あるでしょう。ゲノム解析による科学的な感染経路の追跡が必要です。

ロックダウンを行うにはクリアすべき条件がある

―― ロックダウンは必要だと思われますか? 逢坂 議論すべきだと思います。ただ、まずは現行法制の中でやるべきことをやるのが大事です。そこがうまく機能しない大きな理由は経済的支援です。例えば昨年春の時点で全く支援のない業種がありました。そうした方々はどうしても営業せざるを得なかったのです。人流抑制と経済的支援はセットです。それでもなお感染がとまらないときはロックダウンも考えるべきでしょう。ただ、私権の制限は非常に大きな問題ですから、相当慎重にやらなければいけません。  これはニュージーランド大使館の方から聞いた話ですが、ニュージーランドの国民はなぜロックダウンを受け入れるのか。それは政府に対する信頼があるからだと言うのです。例えば担当大臣が毎日記者会見をしている。それからアーダーン首相も節目で必ずメッセージを発している。だから国民は政府を信頼し、ロックダウンが一定の効果を持っていると言うのです。  では今の日本はどうか。ロックダウンをするからには政府への信頼と科学的な裏付け、経済的支援が必要です。今の緊急事態宣言は科学的裏付けも経済的支援も十分ではなく、国民の皆さんの我慢と気合い頼みみたいな感じでやっている。ロックダウンも気合い頼みでやったら最悪です。強い制限を加えるからには裏付けとなる論拠が必要です。いたずらに私権を制限すれば国民からの反発は必至です。ニュージーランドではゲノム解析もしっかりやって、この感染者の感染経路が見つかればロックダウンを解除できるのだと明確に言うわけです。1人の感染者でロックダウンを行うのかと日本の方は驚くかもしれませんが、きちんとした科学的裏付けがあるからです。
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げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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