更新日:2021年10月30日 09:58
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「維新、イラン!」を掲げる、大阪のから揚げ店主を直撃した

「何もせんかったら、きっと後悔する」

店主の十倉雅宏さん

店主の十倉雅宏さん

「それにあのコロナ対策。死者数も給付金の遅れも大阪は全国ワーストばかりや。商店街の店はどこもブーブー言ってるで。だから維新はイランのや」  力強く持論を語った。信念はよくわかるが、影響力の強い政党を飲食店が真正面から批判して、商売にさわりはしないか? 「何もせんかったら、きっと後悔する。ワシは後悔したくないんや。ゴリゴリの保守やからな」  素晴らしい覚悟だが、飲食店組合の他のお店はどうなのだろう? 「それがあるからな、組合にどの店が入っているかは言えないんや。でも商店街の会長には話を通しとるで。商店街の名前を使わんのやったらまあしゃあないな、ということになっとるから、飲食店組合の名前にしとる」

若い子たちに、夢をかなえてほしい

唐揚げ 張り紙は先週から掲げているが、それで客足が落ちることはなく、むしろ伸びているという。だが十倉さんにとって、売り上げに響く別の要因があった。 「ワシは維新と巨人が大嫌いなんや。阪神ファンやからな。だから阪神の佐藤輝がホームランを打ったら、から揚げ半額というセールをやったんや。そしたらようけ打ってくれてなあ。まあそれはええんやけど、近くの高校の野球部の子らが、佐藤がホームラン打つと部活の終わりに大勢で押しかけてきてな。そらもう赤字やんか。でもまあええわ。若い子が腹いっぱいになるからな」  十倉さんは若い頃、アメリカや中国に渡った。中国革命の父、孫文が設立した中国・広東の中山大学を卒業したそうだ。だから若者の応援をしたいという。 「あそこ(厨房)で働いてる若い2人な。すぐ近くの天王寺の辻調(辻調理師専門学校)に通っとるんや。そんで1人は海外で修業したい言うて、ここで働いて金をためとるんよ。ワシも若い時海外に出たから、あいつらにも夢をかなえてほしい。だから時給は1200円払ってる。最低賃金(大阪は992円)で人をよう使えんよ」 「維新、イラン!」の張り紙の主は、こんな心意気の持ち主でした。 文・写真/相澤冬樹
無所属記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』(角川新書)『メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)など
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